刑事系第2問(刑事訴訟法)刑事系:113点
【設問1】について
第1.逮捕①の適法性について
1.本件において、司法警察員Pは甲を、刑事訴訟法(以下「法」という。)212条2項に基づき現行犯逮捕(法213条)をしているが、当該逮捕は適法か。
2.「罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるとき」
(1)この場合に無令状による現行犯逮捕が認められる根拠は、犯人と犯行が明白性である故に、誤認逮捕の恐れがないためである。
そのため、「罪を行い~認められるとき」とは、時間的場所的接着性を前提として、諸般の事情から犯人と犯行が明白である場合を指すというべきである。
(2)あてはめ
ア.本件において、2人の男によるVの殺人事件が発生したのは、平成25年2月1日午後10時8分であるのに対して、警察官Pらが男らを発見したのは同日午後10時20分であるところ、12分という時間は、時間的に接着しているといえる。また、男らを発見した場所としても事件の現場であるH公園から約800メートル離れた路上であり、上記20分の時間を歩いてきたと考えれば一致する距離である。
イ.しかし、本件において殺人現場を目撃したのはWであり、警察官らはWからの情報に基づいて本件逮捕を行っているにすぎない。このような場合でも、本件において犯人と犯行の明白性を基礎づけることができるのかが問題となる。
まず、目撃者WはPらに対して男のうちの一人が「慎重190、やせ形、20歳くらい、上下青色の着衣、長髪」という情報を伝えている。そして、実際にPらが発見した男はそれと完全に一致していた。ここまで詳細に目撃情報と男の特徴が一致するということは、Wの証言に高度の信用性を肯定することができる。
また、甲は職務質問にたいして黙秘しているものの、甲とともに行動したと思われる乙は自らのV殺害の関与を認めており、甲が直接の行為者であると発言している。そのことから甲がV殺害に対して何らかの関与をしていたことは明らかである。
このような場合には、目撃者Wの情報に基づき逮捕を行ったとしても、誤認逮捕が生じない程度に犯人と犯行の明白性を肯定することができる。
3.各号該当性
甲については、甲の衣服及び靴に一見して血と分かる赤い液体が付着していることから「身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき」に該当する(法212条2項3号)。
4.以上より、本件逮捕①は法212条2項を満たすため、適法である。
第2.逮捕②の適法性について
1.司法警察員Qによる乙の法212条2項に基づく現行犯逮捕(法213条)は適法か。
2.「罪を~明らかに認められるとき」
ア.この点については、時間的場所的接着性については前述のとおり肯定される。
イ.次に、Q自身が乙による犯行の現場を目撃していないという点は、逮捕①の場合と同様である。しかし、Wが目撃した男のうちの一人は「身長約170、小太り、30歳くらい、上が白の着衣、下が黒色、短髪」であり、この情報に基づいてPらが発見した乙もまた同様の特徴を有していた。このことから、Wの目撃情報は高度の信用性があるといえるため、当該情報を前提として逮捕したとしても、誤認逮捕が生じる恐れがきわめて小さいというべきである。
また、甲と異なり、自らが命じてVを殺害したことを認めていることからも、Vの殺人に関与したことは明白である。
以上より、本件においては犯人と犯行の明白性を肯定することができる。
3.各号該当性について
本件において、乙自身には血は付着していないため212条2項3号には該当しないし、また他の各号にあたる事情も存在しない。しかし、乙は甲との関係で共謀共同正犯の関係にあるところ、例外的に現行犯逮捕をすることができないか。
この点、212条2項が、各号該当性を現行犯逮捕の要件とした趣旨は、犯行を行った直後に比べて犯人と犯行の明白性が類型的に小さいためである。当該各号を満たして初めて犯人と犯行の明白性を肯定する趣旨というべきであるから、例外を認めることはできない。
従って、212条2項各号に該当しない以上、法212条2項に基づき現行犯逮捕をすることは許されない。
4.以上より、本件逮捕②は違法である。
第3.差押えの適法性について
1.本件差押えは、逮捕に伴う差押え(法220条1項2号)として適法か。
2.まず、「逮捕する場合」については、実際に甲はPにより適法な現行犯逮捕をされているのであり、その直後に捜索差押えをしようとしているのであるから、問題ない。
3.「逮捕の現場」(法220条1項2号)について
(1)法220条が、例外的に無令状で捜索差押えを許容する趣旨は、現行犯逮捕をした被疑者については証拠物を有している蓋然性が高いことに加えて、令状発布をまっていては証拠を隠滅させられる恐れがあるという緊急性が要請されている点にある。
従って、「逮捕の現場」とは、逮捕現場から被疑者の証拠隠滅を行う可能性のある距離を指すというべきである。
(2)本件において、甲を捜索した現場は逮捕現場から200メートル離れた路上であることから、相当程度離れており、逮捕の現場にあたらないと思える。
しかし、逮捕現場における捜索が被疑者の名誉を侵害し、また交通の妨げになるような場合には、移動してから捜索差押えをする必要性が高い。また、そう解しても、被疑者の有している証拠品が逮捕現場からそのまま移動していると考えられることから、証拠隠滅の危険は変わらない。
従って、上記のような必要性が存在する場合には、逮捕現場に準じた場所として、差押えが許容されるというべきである。
(3)本件においては、逮捕に伴う捜索差押え開始時に、甲が暴れ始めたため、安全に捜索差押えをすることができない状況であった。それに加えて酒によった学生の集団が野次馬として車の通行を妨げていたことから、交通の妨げになっていた。
このような事情の下では、捜索が安全に可能となる場所に移動してから捜索する必要性があるので、交番に向かう途中の200メートル地点は、「逮捕の現場」と同視することができる場所ということができる。
4.差押えと証拠物との実質的関連性
本件において共謀者である乙は甲に対してV殺害についての「報酬100万円」についてメールをしている。仮に、甲がV殺害の報酬として100万円を受け取っていたならば、本件事件についての犯罪情状となる。
そのため、甲の携帯電話報酬に関するメールが残っていることはそれを推認する証拠となるため、本件差押えと携帯電話には、実質的な関連性を認めることができる。
5.以上より、本件Pによる甲の電話の差押えは適法である。
【設問2】について
1.本件実況見分調書は、伝聞証拠として、法320条1項により、証拠能力が否定されないか。
2.伝聞証拠とは、「公判廷外の供述(現供述)で、その内容となっている事実を要証事実とする証拠」をいい、かかる証拠は法320条1項により原則として証拠能力が認められない。これは、以下を理由とする。
すなわち、供述証拠は、知覚・記憶・表現・叙述というプロセスを経てなされるものであり、各過程に誤りが生じ恐れがある。この点公判期日外における供述(原供述)を自由に証拠とすると、かかる供述にあたって、①宣誓と偽証罪の告知②裁判所による供述者の供述態度の観察③供述者に対する反対尋問の保証が無いことから、正確な事実認定を損なう危険性が類型的に認められるのである。
この趣旨から、伝聞証拠に該当するかどうかは原供述の内容が要証事実となっているかどうかによって相対的に決せられる。
3.実況見分調書自体の証拠能力
(1)本件実況見分調書は、その記載内容の客観的真実性を要証事実とするので、伝聞証拠に該当する。
(2)しかし、実況見分調書は法321条3項による伝聞例外として証拠能力が認められるというべきである。
すなわち、同条3項は検証調書についての規定であるが、実況見分調書は検証と同様に、五感の作用によって事物を認識把握する作用である点で、その性質上異なる点はない。また、同条の伝聞例外は、検証調書は場所や距離等の中立的事項について記載するもので捜査官の主観によって歪められにくく、また公判廷で直接述べるよりも書面の方が正確性が担保できるためであるところ、実況見分調書によっても同様の趣旨は妥当するのである。
従って、本件実況見分調書は、Pが公判定で同書面が真正に作成されたこと及び内容の真実性を主張すれば証拠能力は認められる。
4.【別紙1】について
(1)別紙1においてWが「犯人の一人が被害者に対して右手にもった包丁を旨に突き刺した」と説明している。これが当該突き刺したことの存在を立証するために用いるのであれば現場供述として伝聞証拠となる。
しかし、本件立証趣旨はWが目撃した犯行状況を明らかにすることであり、実際の犯行態様を立証するための書面ではない。
従って、Wの指示は現場における指示に過ぎないため、非伝聞である。従って、実況見分調書と一体として証拠能力が肯定される。
5.【別紙2】について
(1)別紙2においては、Wは「私が目撃したときに立っていた位置から十分に見ることができます」と供述している。
本件立証趣旨はWが犯行を目撃することが可能であること、であるため、Wの供述内容そのものの真実を要証事実とするものである。
従って、本件Wの発言は現場供述として伝聞証拠となり、また伝聞例外にあたる事情も存在しないため、証拠能力が否定される。
(2)もっとも、司法警察員も再現状況を十分に確認することができたと述べていることから、一般人をして目撃可能かという客観的状況を立証趣旨ととらえることもできる。このとき、Wが一般人と同様の資力を有していることが客観的に証明されているならば、Wの発言そのものにより目撃可能性を立証することができるので、非伝聞として処理されるため、証拠能力が肯定される。
以上(8p目数行)。
感想:問題を見たときに、逮捕のメインは明白性のあてはめと、共謀者の212条各号の該当性の関係かなあと思った。差押えは逮捕現場の判例を使いつつ、証拠関連性を述べることが求められているのなあ。伝聞は写真のこと書くの完全に忘れた。これは痛い・・・。