原宿のDNAを引き継ぐ新プラットフォーム「ハラカド」 | 島村 美由紀

島村 美由紀

都市計画、商業施設計画、業態開発等のコンセプトワークやトータルプロデュースを手掛ける
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原宿のDNAを引き継ぐ新プラットフォーム「ハラカド」

(不動産フォーラム21 2024年6月号掲載) 

 

 

●面白いモノが詰まった原宿の新名所 
 新宿のド真ん中、明治通りと表参道の交差点に「ハラカド」という大型商業施設が4月にオープンしました。ド派手な場所にド派手な施設、渋谷区では久々の大型商業施設なので連日大勢の人を集めています。

 

 道路に面した低層階は賃料負担力のあるテナントで、ジョーマローン(英国フレグランス)やディオールの大型店舗ですが、ファサードの過半を占めるディオールは秋開業で仮囲いのまま。目立つ立地開発で正面の大型区画を閉じたままの開業は従来にないスタートの切り方です。

 

 館全体は75店舗からなる商業で楽しい店が集まっています。1階の長蛇の列はカンロ飴でおなじみの「カンロ」のキャンディショップですが不思議な食感のグミッツェルが超人気商品です。オールグッドフラワーズキオスクという花屋は展示会やイベントで使われた花をドライフラワーにして再生するなど、リサイクルが組み込まれたSDGs時代のフラワーショップです。2階にあるCOVERというスペースは出版社や一般から提供された約3,000冊の雑誌を集めた雑誌ライブラリーで、POPEYE、anan、non-no、Animageなど一世を風靡した雑誌がストックされた空間です。3階には面白いキャラクターグッズやアートを扱う小店舗がたくさんありますが、匿名希望画廊というギャラリーでは若手アーティストの作品を買うことができ興味がそそられます。

 

 4階はイベントフロアで“ハラッパ”をテーマにしたアートとカフェとお休み処になっていました。そして5階、6階は22店舗が入るフードコート。人工芝の上でランチができたり原宿交差点を眺めてお茶ができたりと大盛況のフードフロアです。

 

 一番の驚きは地下1階の小杉湯原宿で商業施設の中に銭湯があったのはビックリです。高円寺に90年続く老舗銭湯がデベロッパーの開発コンセプトに共感して銭湯を開いたとのこと。番台とおぼしきカウンターに行くと「520円です。富士山の絵があるフツーの銭湯ですよ。」との説明。原宿にフツーの銭湯をつくってみよう!という発想が面白いですね。

 
 

●クリエーターの街、今昔
 ハラカドを見て1978年に誕生したラフォーレ原宿を思い出しました。今では知っている人も少ないのですが、開業当時、ラフォーレ原宿はハイプライスの婦人服店を集めた高級路線でスタートしましたが、街の客層にマッチせず不調。そこで原宿にある小さなマンションメーカーがDCブランドとしてはやり始めた頃だったのでラフォーレに店を集め編集して大ヒットとなり、DCブランドの聖地としてラフォーレは有名になりました。当時は面白いデザインや奇抜なデザインの小店舗がギシッと詰まって売る人も買う人もすごい熱気と独創性にあふれた館でした。そんな勢いの断片がハラカドにおこりそうな気配です。

 

 原宿は田舎町で牧場があったそうですが東京オリンピック(1964年)をきっかけに外国人が往来し、おしゃれな店舗が並び、セントラルアパート(1998年に取壊し)には文化人やクリエーター、服飾デザイナーが住み、DCブランドの聖地となり、その後表参道には世界のラグジュアリーショップが出店しファッションの街として世界的に有名になりました。

 

 ベースにあるのは“都会性と想像力”でセンスのよい人やモノやコトが集まる都会性とそれを生む人々のクリエイティビティ、この2つが上手に絡む事が街の魅力になり、さらにそれに憧れる人を集めスパイラルアップしていきます。コロナ禍で原宿は静かになり商業もキレがなく空きビルや空き店舗がありました。しかし、昨年からスポーツ大型店やファストファッション目当ての人の流れが戻り新店舗も増える中でハラカドのような個性的で新感覚に触れられ気楽に楽しめ面白い人にも出会える場所ができたのです。街が新しいセンスで変わる予感がするプロジェクトです。

 

 

(島村 美由紀)