平均年齢30代の都市-バンコク・ハノイ・ホーチミン その②- | 島村 美由紀

島村 美由紀

都市計画、商業施設計画、業態開発等のコンセプトワークやトータルプロデュースを手掛ける
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平均年齢30代の都市-バンコク・ハノイ・ホーチミン その②-

(不動産フォーラム21 2024年5月号掲載) 

 

 

 2回目となる今回は、バンコク・ハノイ・ホーチミンで見た“街のトレンド”についてお話いたしましょう。

 
 

●バンコクの人々の足元に注目 

 BTS(バンコク市内を走る高架鉄道システム)は市民や観光客にも便利な移動手段ですが、人々を観察する時も役立つステージです。4年ぶりの変化で目にとまったのはスニーカー着用率が劇的に上がったこと。昼間のBTS車内の大半の老若男女がスニーカーを履いています。

 

 以前は男女問わずサンダルや女性は素足にフラットシューズ、ローヒールパンプスの通勤OLなどが主流でしたが、今は多くがスニーカーを履いているのです。日本では90年代半ばからスニーカーブームが起こり今では日本人の定番靴となっています。

 

 タイでは2018年頃からスニーカーブームが起こり有名スポーツブランドの店が増え、若者だけでなく都心居住のミドル・シニア層へも浸透しています。過半がナイキ着用。世界的にナイキは強いですね。中にはストリートファッションとナイキのプレミアムスニーカーでキメキメの男性もいて、渋谷・原宿と遜色ありません。

 

 その中でもキレイ目なお洒落女子やK-POP系イケメン男子はニューバランスを履いて差別化をはかっています。サンダルスタイルの人は激減していました。日本とタイの所得差は約4倍なので「バンコクではニューバランスやナイキが安く買えるのかも?」と大型店をチェックしましたが、日本円で1万円台~3万円台が主流。バンコクの人々は高価なスニーカーを買い楽しんでいる様子がうかがえました。

 

 

●国産コーヒーチェーン最強ベトナムではスタバも燻る

 

 どこに行っても緑色のスタバ看板を見かけ食傷気味になる昨今、ベトナムでは2013年ベトナム上陸以来10年目にしてようやく2023年に100店目がオープンしたそうで、苦戦しています。その理由は国内のコーヒーチェーンが強く、国民に愛されているからです。ベトナムには広大なコーヒー農園があり近年はブラジルに次ぐ世界2位のコーヒー輸出国。生産から販売まで一貫して管理するコーヒーチェーン大手が複数あり、街中のカフェでは安価で気軽にコーヒー休憩ができるカフェ文化が育っています。

 

 ハノイやホーチミンのショッピングセンターではHighlands CoffeeやCONG CAPHE等、質やサービスが充実した店が必ず出店していました。街中にもここぞという好立地に大手コーヒーチェーン店があり1杯が約150円程度で紅茶やフードもスイーツも充実し、店にはWi-Fiも設備されているので長居客も多く常ににぎわっていました。また公園や湖の畔や古い住宅地には個人が経営する隠れ家的お洒落カフェもたくさんあり、カフェ文化の奥深さを感じます。

 

 さらに「Grab」等の配達代行サービスが発達しており、クーポンなどの割引サービスをつかうとカフェに出かけるより自宅(会社)から注文し配達してもらった方が飲み物だけでも安くなるそうです。ホーチミンの交差点の大手カフェでお茶していると、Grabのバイクが常に10台はとまっていて店から品を受け取って注文先へ向かう超スピーディな配達人の動きがありました。

 
 

 世界中の新しい情報が瞬時にキャッチアップできる時代です。バンコク市内では気の利いたグルメストアが複数開業し、健康・自然をうたい文句にしたベジタブルレストランやかわいらしいドーナツや和菓子の専門店が誕生していました。ホーチミンやハノイでは日本人が始めた石窯ピザレストランがトレンドレストランとして人気を集め、高感度都会人に注目されています(メニューも味もクオリティあり)。ホーチミンでは都心から少し離れた小ぢんまりしたラグジュアリーホテルがSNSのホットスポットになり、お洒落をした女性たちやカップルの聖地になっていました。

 

 旬には差がなくなり、人の勢いがエキサイティングな街をつくりスピード感ある変化を生むことを体験した旅となりました。

 

 

(島村 美由紀)