四半期決算報告 - レビュー監査とは | ロンドンで働く会計士のブログ

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昔、DJ & バンドマンだった会計士の日記

日本では金融商品取引法の試行により
大幅に上場企業の開示制度が見直されました。

そのうちのひとつ、内部統制の報告制度に関しては
前回触れました。


今回は、四半期報告書の義務化と
レビュー監査について。




これまで上場企業は1年に2回の決算報告書の開示を
行っておりました。


確かに大多数の上場企業はすでに
四半期ごとのレポートを開示していましたが
これらは法的に義務づけられたものではなく
自主的な発表によるものでした。

つまり、ここに粉飾が含まれていても
なんら法的処罰を受ける対象にはならなかったのです。


しかし今年の四月以降
金融商品取引法は四半期報告書の開示と
監査人によるリビュー Review を義務化しました。



さて、この「Review」。
いわゆる Audit 監査とは
厳密には異なります。


日本では聞き慣れない
リビューという業務について
イギリスの監査に触れながら
見てみたいと思います。




監査とは企業が作る決算報告書について
信用できるかどうか意見をすることだ、と
以前に書きました。


実はこの意見には
2つのレベルが存在します


Positive Assurance - 積極的保証

Negative Assurance - 消極的保証



何が違うのかというと
読んで字のごとく
意見の語気が違います。


Positive Assurance では
監査人は積極的に保証する。

Negative Assurance では
消極的に保証する。




・・・・。


笑)
具体的に言うと、Positive Assurance は
内部統制の評価、詳細な証明手続き、質問そして分析手続き
などによって十分な裏付けを得た上で
「この決算報告書は信用できます」と意見すること。

一方、Negative Assurance は
内部統制に関してはある程度、企業を信頼した上で
分析手続きと質問を中心に行い
「特に問題はありませんでした」と意見すること。


では、実際にどんな意見が下されるかというと


Positive Assurance:
「In our opinion, the financial statements give a true and fair view, in accordance with UK GAAP...」

「我々の意見としては、この決算報告書は真実かつ公正な見解を示しており、UK GAAP に従っており...」


Negative Assurance:
「Nothing has come to our attention that cause us to believe that the financial statements are not prepared, in all material respects, in accordance with...」

訳しにくいなぁ
「この決算報告書は、すべての重大な点において○○会計基準に従って作成されているとは言えない、と思わせるような我々の注目を引くようなことはなかった...」

要は、Positive では
「決算書は真実かつ公正です」
と言い切ってるのに対し
Negative では
「特に問題はなかった」
と遠回しに肯定してます。



随分と語調、語気が違うと思いませんか?


やはり十分は裏付けを取っているものと
そうでないものでは
意見にみなぎる「自信」が違う。


そして、これらの異なるレベルの保証は
異なるレベルの業務から生まれます。
まとめると

Statutory Audit Engagement 法定監査業務

内部統制の評価、十分な証明手続き、質問、分析手続き

Positive Assurance


Review Engagement リビュー業務

質問、分析手続き

Negative Assurance




日本の話に戻って。

2008年4月から上場企業は
年に四回の決算報告を行うと同時に
各報告書は監査を受けなければなりません。


第1四半期決算 - Review リビュー
中間決算 - Interim Audit 中間監査
第3四半期決算 - Review リビュー
最終決算 - Final Audit 最終監査


という流れ。


上記のように第1と第3四半期の決算において
2回のリビュー監査が行われることになった
というわけです。





ところで、四半期ごとの決算書の開示が
義務づけられていないイギリスで
このリビューはどんな場面で必要なのでしょうか。


監査とは必ずしも法定監査とは限りません。
企業が自主的に決算書の監査を依頼することもあります。

例えば、銀行から新たな借入をしようと思ったら
決算書の提出など会社の財務状況の開示を
求められます。

このとき、中小企業だからといって
監査を受けていない決算書を提出しても
受け取ってもらえません。

なぜなら粉飾の可能性が非常に大きいから。

だからといって
小規模な会社が監査を依頼するのは
あまりにも負担が大きすぎる。

そこで監査人によるリビューというものが
必要になってくるのです。


他にも、小企業でありながら
オーナーと経営者が異なる場合
オーナーが経営者の用意する決算書に
リビューを依頼することもあります。



金融商品の多岐化と
会社の財務構造、経営システムの複雑化が進み
コーポレートガバナンスが叫ばれる中
今後ますますリビュー監査の需要は
高まっていくと思います。