会場でも受付されるとのことなので、福井の読書好きな方はいかがでしょうか。
頭部に負った傷により恐怖を感じなくなったベン・ケーニング。
連邦保安官を退任し、ある理由から身分を偽って各地を彷徨っていたが、かつての上司から行方不明の娘の捜索を依頼される。
〈ワシントン・ポー〉シリーズのM・W・クレイヴンによる新シリーズ。
持ち歩いて読むには不向きな分厚い文庫本でしたが、読みだすとスルスル読めて止まらなくなる、そんなハードボイルド・アクション小説でした。
主人公は任務中に負った傷の影響で“恐怖心”というものを失った男ケーニング。
どのような危険な場面でも恐怖心による反応の遅れなど無く、訓練されたその能力をいかんなく発揮した壮絶なアクションが堪能できます。
そして、ただ強いだけでは無く、先を読んで、そして機転を効かせる様がなんとも小気味良く、それゆえにテンポよく読めたのかも。
著者の〈ワシントン・ポー〉シリーズでは本格的な謎解きや仲間との信頼や協力などが描かれているのに対し、こちらは基本的にケーニングによる単独行動であり、ミステリとしては本格というよりはサスペンス寄りと、違った魅力で楽しませてくれるのもいいですよね。
個人的には恐れを知らないケーニングに、敵対する側がその姿を見て恐怖心を覚える、そんな場面がもっと誇張されるように描かれていれば、読んでいて、より高揚感を覚えそうだとも思いました。
というか、ケーニングが敵地で大男と対決して苦戦する場面では、ケーニングに対峙する敵の大男のその不敵な姿は、ケーニング以上に恐怖を失った男に見えたりして(笑)。
ところで恐怖心は失っても人間らしい魅力がケーニングにはちゃんと残っているのもポイントかと。
かつての上司に対する恩や正義感といったヒーローらしさと、どんな場面でもユーモアを忘れないような独白もまた魅力でした。
ケーニングが今後どのような活躍を見せるのか、楽しみです。
町の誰からも好かれている男エイダン。
そのエイダンに何年も監禁されている“レイチェル”は、エイダンが引っ越しを余儀なくされた事から、エイダンの引っ越し先である家にてエイダンとその娘セシリアと同居する事に…。
何年も監禁されながらも、生き延び、そしていつか逃げ出せるようにとのルールを自らに課しているレイチェル、エイダンの娘セシリア、それにエイダンに恋するバーテンダーのエミリーの視点で描かれるサスペンス。
エイダンは、実はレイチェル以外の女性も襲っているシリアルキラー。
しかし、困っている人がいれば率先して手助けをする、そんな姿を見ている町の人たちからは、老若男女問わず好かれている存在であり、それは妻を亡くして失意に沈んでいるエイダンを慰めようとイベントまで開催される様子からも見てとれるほどです。
さて、エイダンの家で同居するような形になるレイチェルですが、基本的には部屋に閉じ込めらた状態で、最初には夕食を取る時にしかセシリアと顔を合わす事もなく、その場でも言葉を交わす事もありません。
しかし、エイダンの油断もあって徐々にセシリアとの距離を近づけ、脱出への希望が高まっていく様子は、果たして首尾よく逃げる事ができるのかと、緊張感もあってドキドキしました。
なお、レイチェルのパートでは著者が「あなたは…」と呼びかけるように描写されています。そう、レイチェルは読み手自身でもあり、誰もがレイチェルと同じような境遇におかれる、そんな恐れがあるのかも。
そして、支配される事の絶望や恐ろしさ、生き延びるために持つ強さなど、その姿に共鳴するように感じる事で最後まで一気読みでした。
ところでバーテンダーのエミリー視点のパートは、恋は盲目というかまるでストーカーのような行動を取ったりする場面は、ロマンティック・サスペンスのようでもありましたね(笑)。
しかしエイダンはなぜ他の犠牲者と違ってレイチェルは生かしたまま監禁していたのでしょうか。このあたり、どこか示唆されている場面あったのかな。
そして一番心配なのは娘のセシリアかも。
レイチェルとセシリア、二人が笑顔で会えるような、そんな未来の場面が見てみたいです。
