灰の王 海外ミステリー | 固ゆで卵で行こう!

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ハードボイルド・冒険小説をメインにした読書の日々。


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父が事故に遭い昏睡状態と報され投資会社のCEOのローマンは、実家の火葬場を切り盛りする妹のネヴェアと、いつまでもふらふらしている弟のダンテが住むヴァージニアの寂れた町へ帰郷する。
そこで父が襲われたのはギャングとトラブルを起こした弟への“見せしめ”だったことを知ったローマンは、弟を助けるためにギャングと接触を図るが、それは否応なくローマンを血と暴力の世界へと踏み込ませることに…。
 
 
 
まさに「灰の王」!
 
積もりに積もる灰の分だけ、憎しみや怒り、後悔や哀しみ、愛が崩れ落ちそうで、読み終えたときにはなんともいえないような息を吐きだすことに。
 
そんな、暴力が渦巻く重苦しい物語ながら、主人公のローマンと弟のダンテ、そして妹のネヴェアのやり取りには家族ならでは愛の深さゆえの、そしてローマンが出会うジェラシーという魅力的な女性とのオタク同士のジョークなど、時折差し込まれるユーモア溢れるやり取りが印象的で、意外に軽やかさも感じさせます。
 
そのせいか、思った以上に読みやすいこともあって、どっぷりにこの世界にハマりました。
 
 
子供の頃に失踪した美しい母親は、従業員と浮気していて、それを知った父に殺され火葬場で灰にされたと噂されている故郷に5年ぶりに戻ってきたローマンですが、その深層心理に誰にも言えない傷と闇を抱えています。
 
そんなローマンですが、疎遠になっていたとはいえ家族を想う気持ちは本物で、ドラッグと酒に溺れどうしようもない弟のダンテの取り返しのつかない失敗に対し、危険を省みず助けようとギャングに働きかけます。
 
しかし、自身が生きてきた世界からは想像以上のギャングの危険な世界。ローマンは抜き差しならない深みにはまっていきます。
 
一方、家業である火葬場の仕事を切り盛りしてきた妹のネヴェアは、妻子持ちの警察官と関係を持っているものの、決して相手のことを愛している訳で無く、意識不明の父に対しても母を殺したのは父であると殆ど信じているなど、屈折した感情を抱えています。
 
弟のダンテは母を失って以降、その哀しみと寂しさゆえか、一人前の大人として自立できずに酒とドラッグの世界で生きており、ダンテが何かする、もしくはしないことによって、ローマンたちはより危険な状態へと陥ることに。
 
ほんと、ダンテ、お前がもうちょっとしっかりしてくれればと読みながら思わず叱ってしまいそうになりますが、ある意味純粋で子供のようなダンテって、ローマンじゃないですが憎めない存在ですね。
 
果たして母は本当に父に殺され灰にされたのか、父を信じるローマンと疑うネヴェアですが、その真実が明らかになったときに受ける痛みと哀しみというのは、それぞれ抱えきれるものでは無いでしょう。
 
暴力が暴力を、血が血を呼ぶ世界で、自身の知略でもって自分自身と家族を救おうとするローマン。
 
生き残るのは自分たちであることを最優先にするその思考とそれに伴う行動、その非情ともいえる復讐の仕方に対してはある意味ギャングたちと変わらないものがあるのかもと、少し恐ろしく感じるものもありました。
 
みんな間違いを犯す。けれど家族は守ると誓ったローマンが歩むことになる道とは。そしてその先にある世界を想像せざるを得ません。
 
コスビーの新作、圧倒されました。
 
 

「灰の王」S・A・コスビー 翻訳小説