
〈ワシントン・ポー〉シリーズ6作目。
いやー、冒頭に描かれるエステル・ドイルによるメッセージには思わず声に出して笑ってしまいました。
ドイルとポー、ポーとティリーのやり取りだけでもずっと読んでいられます(笑)。
なんとも貴い関係性です。
けれどもそんな関係について、本書の帯に書かれた文言にはなんとも不安を掻き立てられました…。
今回、重大犯罪分析課の部長刑事ワシントン・ポーが精神科医と面談し、トラウマを抱えるきっかけとなった事件について語るというスタイルで描かれています。
それは、聖書の刑罰のように木に縛られカルト的教団の指導者が石打ちで殺されるという事件の捜査を進めるうちに、おぞましい真実が浮かび上がると同時に、ポー自身が色んな意味で危機に陥った経緯。
このシリーズ、毎回毎回おぞましくも胸糞悪い事件が描かれていますが、今回もこれまでと負けず劣らずというか、これまで以上のものが。
けれどもポーが過去を語るというこれまでにないスタイルで、直接的な描写は少なめなせいか、はたまた意外と動きが少なく展開としては地味めなせいか、読んでいて目を背けたくなるという程では無かったかな。
さて、ポーとティリーの元には会計監査院から派遣されたという触れ込みでライナスという人物が送り込まれていましたが、ライナスの真の正体と目的とはといった、ちょっとした謎も。
もっとも正体はともかく目的は明白で、その結果とは果たして…。
そして事件そのものの謎、カルト教団の指導者は誰に何故殺されたのか。そしてティリーにも解けないコードとは。
謎が謎を呼び、短い章立てと次へ次へと読みたくなるようなヒキで読者を吸引するスタイルは変わらないので、特に後半に入って謎が解明されていくと読むのが止められなくなります。
とはいえ、実を言うと「もしかしてそうかも?!」と予想した事はだいたい当たってしまいました。
それでも終盤には、「予想したのとは違ったかな?」と思ったところで「やっぱりそうだったのか!」という風に展開させる辺りは上手いですし、驚きました。
そして何よりもポーの諦めない姿というのが胸を熱くさせるものがあります。
そして、そんな正義を追い求めるポーの姿、ちょっとマイクル・コナリ―のハリー・ボッシュを思い浮かべたりも。
それにしてもこの後、ポーたちはどうなったの?!
本国では既にシリーズ7作目が刊行されているとの事なので、続きが翻訳されるのが待ち遠しい!

