夏鳥たちのとまり木 | 固ゆで卵で行こう!

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ハードボイルド・冒険小説をメインにした読書の日々。


時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

 

 

中学教師の葉奈子は、自身が中学時代に母子家庭でネグレクトといえる環境の中で、ネットを通じて知り合った男性の元に逃げ込んだ過去が。
その時のことは自分の中で救いになっていたが、問題を抱えている教え子がいるのを知り、葉奈子は自分自身とも向き合うことになる。



SNSによる未成年者誘拐というテーマを軸に描かれる希望の物語。

「だいじょうぶ?」と聞かれると「だいじょうぶ」としか答えることができなくて。

でも、本当は大丈夫なんかじゃなくて。

そんな時に「だいじょうぶだよ」って言ってもらえたら、それは間違いなく救いで心の拠り所に。


主人公の中学校の教師である葉奈子にとって、中学生のときに「だいじょうぶ」と言ってもらえたことは、「助けてほしい」と声をあげることができない他の多くの人たちのように、救いであって大事な言葉。

でも、その言葉の裏にあった真実に葉奈子にとって向き合う必要があるもので、それは大人になって、そしてかつての自分のような子供たちを見守る教師となった今だからこそ、向き合う強さが必要だったんじゃないでしょうか。

葉奈子が指導する生徒が描いた鳥かごと鳥の絵のように、それは見る側によって捉え方や受け取り方が違うというのはハッとさせられます。

そしてそれは、真面目ではあるけれど、ほとんど無気力ともいえる生活を送っていた葉奈子が、公園で拾った土鳩を汚部屋の中で世話するも、その果てに向き合うことになるものと重なるようでもありました。

また、毛嫌いしていた同僚の教師である溝渕の本当の姿を知っていく様子や、秘密を抱えた生徒と向き合う姿、そして自分自身とも向き合っていく姿というのがとても誠実に描かれていて、最初はザワリとする感触のあった物語も、最後には清々しい気持ちで読み終えることができました。