クリスマスを直前に控え大雪となったある日、12歳のマイロの両親が営む小さなホテル〈グリーングラス・ハウス〉に、5人の奇妙な客がやってくる。
それぞれ滞在日数も告げず、何やら目的があってこの雪に閉ざされたホテルにやってきた模様。
マイロは誰かが落とした思しき古い海図を手掛かりに、彼らの目的を探ろうとする中、窃盗事件が起きて…。
雪に閉ざされた小さなホテル〈グリーングラス・ハウス〉に次々と宿泊客が。
そのホテルを営む両親の子であるマイロは、少女メディに誘われるように現実とは違う何者かになりきり、ホテルで起きる事件とホテルそのものの謎を追う事になります。
実は養子であるマイロは、見た目も育ての親とは明らかに違う事で、自分を受け入れ愛してくれる二人の事は大好きだけど、それゆに罪悪感を抱きながらも本当の両親について想像を。
その姿というのは切ないものもある中、マイロの気持ちもよく分かります。
でも、メディに誘われロープレイングゲームをするように、実際の自分とは違う人物になりきり、様々な謎に挑むようになる思いがけない冒険で、「何者にでもなれるんだ」とマイロが成長する姿と共に、周りの人に見せる優しさが胸を打つんですよね。
また、メディに対して最初は距離があるものの、相棒としてその距離が縮まり信頼し合える仲となる様子も微笑ましくも楽しかったです。
ところでメディに関する事は早々に分かりました。
同じように分かったという方もいらっしゃるかと思いますが、どうでしょう。
何はともあれ、クリスマスストーリーとしてファンタジックで、とてもあたたかい気持ちになれる物語。
クリスマスの時期になるとまた読みたくなる、そんな一冊です。
ところで、初めて読んだ時には「きっと◯◯なんだろうなぁ」と、あの事が気になりつつ読みましたが、再読時、それを分かっていながら読むと、マイロの少年らしい心の機微、優しさとあたたかさに胸を打たれ、より涙する場面も。
特に、マイロがある人物から龍のフィギアを受け取る場面、そこにはマイロが自分のルーツに想いを馳せながらも複雑な胸の内を受け容れるようなその姿には思わずグッとくるものがありました。
これは著者がこれから養子として迎える我が子への、そして同じような境遇の子供たちへのメッセージで、込められている想いを著者のあとがきで知った事で、より深く感動してしまいました。
ところで本書には続編やスピンオフシリーズがあるそうなんですが、翻訳されないのかな。東京創元社さん、お願いします!

