クリスマス間近、司書のジェニファーが殺され、交際相手のトラヴィスが殺害したとして逮捕される。
本人も犯行を認めているが、二人の交際する姿を知る弁護人のヴィクトリアは違和感を覚え、大学教授のキャメロンに調査を依頼する。
なんといってもアンドリュー・クラヴァンの新作、それも本当に最近の作品が読める日がくるとは。もうそれだけで嬉しかったりして(笑)。
事件について語られる雰囲気はどこか暗鬱としている雰囲気ですが、クリスマスストーリーという事で最後は綺麗にまとまっています。
被害者のジェニファーと加害者のトラヴィス。
二人は恋人同士で、その熱々ぶりは周知が認めるところだっただけに、トラヴィスがジェニファーを殺害する事に違和感はあるものの、証拠もありトラヴィス自身も犯行を認め、他には何も語ろうとしない中で、元教え子で一時期関係のあった弁護士のヴィクトリアからの依頼を受けたキャメロンは不可解なものを見出します。
そのキャメロンの調査方法が独特なもので、それはまるで目の前に見えているかのように脳内で想像し事件を再構築する事で真相に近づいていくというもの。
そんな調査の中で、キャメロンの過去についても語られるのですが、子供の頃の思い出、美しき少女に抱いた恋心の行方の苦みなどが、どこか鬱とした雰囲気をこの物語を覆います。
けれどもこの物語はクリスマスストーリー。
トラヴィスが抱えていた痛みは、娘のシャーロットを通じてジェニファーと出会った事で変化し、二人の間にもたらされた奇跡のような愛が生まれます。
それがキャメロンの深い内省と共に情感たっぷりに描かれており、事件の行方と共に確かめる事ができた時には得も言われぬような嘆息を覚える事ができました。
ところで本書はシリーズ一作目という事で主人公の大学教授のキャメロンについての紹介という部分も大きく、彼についてはまだ想像するしかない部分もあります。
かつて関係のあったヴィクトリアへの仄かな想いというものは今後も描かれるのでしょうか。
キャメロン自身の事も含めて気になりますが、二作目以降でどう語られるのか楽しみです。

