『リマインダーズ・オブ・ヒム あなたの遺したもの』 コリーン・フーヴァー | 固ゆで卵で行こう!

固ゆで卵で行こう!

ハードボイルド・冒険小説をメインにした読書の日々。


時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

 

 

飲酒し車を運転し事故を起こしたカナは、その事故で最愛の彼であるスコッティを亡くしてしまう。
絶望に陥ったカナは、5年間の服役後、獄中で生んだ娘に会いに町に戻る。
そこで出会ったのはスコッティの両親ともどもカナの事を憎んでいる、スコッティの親友レジャーだった…。



あらすじを読んだだけで辛くなりそうと、購入後もしばらく寝かせていた本書。

読み始めてみると、やはり胸が苦しく、そして辛い想いを。

けれどこの物語はまごうことなき〈愛と許し〉そして〈再生〉の物語で、溢れる愛に涙せずにはいられませんでした。

最愛の人であるスコッティを自身の過ちで失ったカナ。

5年間の服役を終え、一度も抱く事が叶わなかった娘ティエムに会いに戻った町で出会ったのは、最愛の人の親友レジャー。

愛と憎しみに揺れる心の機微や、ただただ愛し愛されたい、許されたいと願う想いが、甘すぎないロマンスとして描かれる事で、主人公を含めそれぞれの立場になり、思わず一緒になって悩み、考えてしまいます。

レジャーは親友であるスコッティを殺したカナの事を憎んでいたはずなのに、実際にカナに会って心が惹かれるのと許せない気持ちで心が揺れ動く様子、そしてカナを許し愛するようになる過程が丁寧に描かれているので、レジャーに感情移入もしやすかったです。

カナは許してもらいたいと願いながらも許される事はなく、娘にも会わせてもらえない現実を受け入れる覚悟をもっています。
しかしながら希望を捨てきれずにいる様子が、カナがスコッティや娘に宛てて書いている手紙から溢れる愛によって切々と訴えてきて、カナと一緒になって苦しみながらも、なんとか許されて欲しいと願ってしまいます。

その一方で息子を亡くしたその両親の想いというものは、簡単にカナを許せるものでは無いでしょうし、果たして自分だったらどうだろうと最も考えさせる部分でもあり、もし許せるとしても、許すべきだと理性では考えても、感情が追いつかず時間が必要なんじゃないかなと思いました。


それにしてもカナの真摯な想い、そして何より亡くなってはいるものの誰からも愛されたというスコッティその人が未来を繋いでくれる様子は清々しくもありました。