数々の事件を解決してきた名探偵、除夜一郎
ある時「もう誰も殺させない」と、事件が起きる前に未然に防ぐことを決意する。
なんといっても著者が紡ぎ出すノスタルジックな世界観、やはり読んでいて心地良かったです。
舞台となる街には、街のどこからでも見える「希望の塔」と呼ばれる。入口も無く、中には塔の上に登るための階段も無いと噂されている塔が。
この塔が、生きるうえで、時に感じる絶望から希望の光を見いだすシンボルとして描かれているようで、優しくも温かく読者を包み込んでくれるのでは無いでしょうか。
さて、名探偵と呼ばれる除夜ですが、その除夜も絶望の中から希望を見いだしていきます。
犯罪が起きるから探偵がいるのか、探偵がいるから犯罪が起きるのか。
「卵が先か、鶏が先か」ではありませんが、自身の存在意義に悩む中で、ひょんなことから探偵助手を務めるようになったミサキさんの存在が除夜にとって指針となり光となったのではないでしょうか。
そして何から逃げ出してきたミサキさんにとって、除夜と共に過ごし経験し考えた事が救いとなっている様子に、二人の探偵と助手ぶりをもっと見たくなります。
また、除夜に謎解きを挑戦してきた、新聞を作っていて物語を書きたいという少年に、江戸川乱歩の少年探偵団のような活躍をさせてくれたら面白そう、なんて想像も。
ところで犯罪が起きる前に防ぐというミステリーは、設定内容に違いはあれど前例もありますし、探偵が主人公ではありますがミステリー要素はそれほどありません。
また、ミステリーを読み慣れている人なら謎の答えについても察しがつくかも。。
そんな中でクリスティの某有名作品についての言及があったのはちょっと意外でした。
クリスティが日本に、少なくとも日本語に翻訳されてはまだ紹介されていないという時代という風に、本作の舞台が見えてくるのも面白かったです。


