イリュージョニストのテンペスト・ラージは、ショーでの失敗により職を失い実家に戻ると、家業である工務店の手伝いする事に。
工務店がリフォームの依頼をされた古い屋敷の壁を壊すと中から死体が…!
これは予想以上、期待以上に楽しかったです!
古い屋敷のリフォーム中に壁から出てきた死体は、とんでもない失敗(仕組まれたものと思われる)でラスヴェガスを放逐されたイリュージョニストであるテンペストのステージ・ダブル(替え玉)。
何十年も開けられた様子も、秘密の入口も無さそうな壁にどうやって死体を?!
そもそも殺されたダブルの彼女は、本当はテンペストを狙ったもの?!
テンペストの一族の長子は殺されるという「呪い」とは?!
ショーの最中に消えた母親は果たして?!
この楽しさは、Who? How? Why? といった本格ミステリー要素が思っていた以上に詰まっているからであり、美味しそうなインド料理の数々、そして友情や家族愛、仄かなロマンスといった要素がバランス良く詰めこまれているからじゃないでしょうか。
そしてテンペストの実家が経営する工務店〈秘密の階段建築社〉が作る、合言葉と唱えると現れる読書室や、秘密の花園へのドアが隠された柱時計など、そんな仕掛けに子供の頃を思い出してワクワクしたりも。
他にも幼馴染であるアイヴィがテンペストを誘う秘密の図書室は、本好き、そしてミステリ好きは思わず憧れてしまうような場所ですよね。
そこで二人が事件について語る際に、カーの密室講義などを引き合いにしながら話し合う場面もまた楽しく、友人同士や読書家などでこういった経験がある方は思わずニヤニヤしちゃうかも(笑)。
テンペストの祖父が作るインド料理の数々はその描写だけで美味しそうだし、テンペストがマジックを見せる場面も楽しく、読んでいて終始楽しい物語でした。
欲をいえば、テンペストがラスヴェガスで行っていたという派手なショーも見てみたかったかな。
さて、テンペストの一族の長子は殺されるという「呪い」の正体については明らかになるものの、消えた母親の件については謎が残ったままですし、三角関係に発展しそうなロマンスの行方も気になります。
続編が待ち遠しい!

