正しい行いにこだわる愛奈は、その性格から他人との関係性は拗らせ気味。
そんな愛奈は宝くじで2億円が当たると、仕事も辞め、自身は節制生活を続けがらも、慈善団体やネット上で欲しいものリストを公開している人で生活に困っていそうな人に寄付をする毎日を過ごしていた。
そんな中、突然、コロナ禍で失業し、推し活によって破産寸前という従姉妹の忍が愛奈のアパートに転がり込んでくる。
居候となった忍に愛奈は、欲しいものリストについて教えてみるのだけれど…。
「正しいこと」をより強く押し付けられる風潮になったコロナ禍が舞台。
主人公の愛奈自身が元々不正を許さない性質で、そのせいで周りとの関係性を築きにくい事もありますが、コロナ禍でそれがより顕著に。
そんな中で思いがけず手に入った2億円。
それを困っている人に向けて寄付し自己満足に浸っている中で、Twitter(現X)でフォローしている方もコロナ禍で生活が苦しくなりネットで欲しいものリストを公開しているのを知ると、その人のために愛奈はリストから選んで贈り物をします。
後日、愛奈による贈り物についてその方が言及している呟きを見るのですが、呟きではそもそも贈られたものかどうかも分からない内容にモヤモヤするものを感じます。
そんな愛奈の元に、性格も正反対な従姉妹の忍が転がり込んできて、奇妙な共同生活を送る事に。
推し活のためには惜しみなくお金を使う忍の姿を見て、愛奈の中で変化が生まれるのですが、それは忍のバイトのお客さんであるトーテムさんによって説明される「ポトラッチ」という贈りものに関する概念というかシステムが、分かりやすく腑に落ちるものがあったからでしょうか。
タイトルにあるその「ポトラッチ」というのは、フランスの社会学者、文化人類学者であるマルセル・モースによる『贈与論』に出てくる言葉で、「贈答」の意とのこと。
全然知らなかったので「ふむふむ」「なるほど」って感心しながら読んでいましたが、性格もお金の使い方も正反対な愛奈と忍の姿をから、贈ること、その返礼、また、寄付などお金の使い方や、正しい行いにおける相反するような思いについて考えさせられたりもしました。
とはいえ答えは出ませんが(笑)。
そして愛奈と忍がお互いの影響を受けて少し変わった様子が見られるだけに、二人の今後が気になるところ。
特に振り幅が大きい愛奈はやはり心配になりますね(笑)。
でも、忍との共同生活やトーテムさんとの出会いで、多少なりとも生きづらさが緩和されている事でしょう。
もっとも「生きづらさ」も他人の尺度で測れるものでは無いのかな。
当人にとってはそれが「普通」で生きづらくは無いかも知れないので、価値観の押し付けになったりするのかもと、やはり明確な答えは出なかったりして。

