『夜明けを探す少女は』 ジュリアナ・グッドマン | 固ゆで卵で行こう!

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黒人の少女ボーは、不法侵入の疑いで白人警官に射殺された姉カティアの無実を信じ、現場に一緒にいたはずなのに行方をくらましている姉のボーイフレンドを探し始めるのだけれど…。



大好きで憧れだった姉カティアを喪った哀しみにくれる主人公のボー。

自分たちが住む、治安の悪い低所得者層が住む地区から出る事をボーに説いてた姉が、犯罪に手を染める筈がない。

 

そう無実を信じ、行方をくらましている姉のBFを探す中で、姉が亡くなった事で崩壊するボーの周りの世界と、ボー自身の精神の危うさが胸に迫ります。

とはいえ怒りや悲壮感だけでなく、亡くなった姉との回想場面も含め、親友や好きな人とのやり取りなど明るい面も描かれている事で、等身大のボーの姿が見る事ができるのが印象的です。

黒人である事、家に誰かが侵入して荒らされても警察を呼ばないような地区に住んでいる事、父親が仕事を見つけられないでいる事、母親が姉の死によってふさぎ込んで自分の事をちゃんと見てくれない事。

変えられない、変える事が難しい現実もあり、決して終わりよければ全てよしと言えるような結末を迎える訳ではありません。

その中で描かれるボーの揺れ動く心情が細やか。

仲違いしている親友同士に心を痛めたり、信じていたものに裏切られたり、守りたいもののために嘘をついたり、危ないところに自ら乗り込んだり、いろんな顔を見せてくれます。

その上で迎える前向きなラストは読んでいて心地良く、どうしようもなく思える現実社会でも、信じれるもの、信じたいと思えるものがある、希望も感じ取れるような爽やかなラストがなんとも鮮やかです。



それにしてもボーは愛されていますよね。

父親は仕事もせずに文句ばかりで、母親は姉が死んでからはボーの事をちゃんと見ようとしなかったりしても、学校、それに社会からボーにとっては理不尽と取れるような扱いを受けても。

ボーの友人たちはその形はそれぞれ違ってもボーを助けようとしてくれます。

そういう友達がいるのは幸せな事だし、だからこそ前を向いていける強さを持つ事ができる事にボーもきっと気付く、そう感じたりもしました。