ヴァージニア州チャロン郡の年間最優秀教師にも選ばれた教師スピアマンが銃撃される。
犯人の黒人青年は投降しようとしたかにも見える中、保安官補に射殺される。
人種間の対立が残る南部の町に更なる争いが見込まれる中、元FBI捜査官の黒人保安官タイタスは、被害者の遺品から衝撃的な内容の記録を見る。
怒りと哀しみ、爽快感と希望が滲むようなラストの描写には、滂沱の涙を禁じ得ませんでした。
また、読んでいる間は、最初からその重さ、痛々しさ、苦しさで胸がいっぱいになりましたが、町を覆う不穏な空気、その暴力的なまでの圧倒的な描写、主人公のタイタスの内側から湧き上がる怒りと懊悩による熱情によって先へ先へとページを捲る手が止まりませんでした。
黒人が奴隷から解放された昔から変わらず人種間の対立が根深く残る、南部の田舎町チャロン郡。
そこで発覚した黒人の子供たちをターゲットにした連続殺人事件を、元FBI捜査官で黒人保安官のタイタスが追います。
恐ろしくもおぞましい事件は、更なる悲劇を連鎖するように町にもたらし、多くの血が流れる事に。
その中で主人公のタイタスが自身に課している贖罪は、人種にも信じるものにも関係なく、法の下で、そして正義の下で平等であり、守るべきものとして、正直で誠実なものとして一貫として描かれています。
けれども流れる血の多さは、そんなタイタスの信念を揺さぶるもの。
それでも、だからこそ、怒りと憎しみに満ちた不完全な世界でタイタスが選択する道に心が震えます。
多くの悲劇を経験し、神の存在を信じなくなったタイタスが聖書等の言葉をそらんじれる事、そして、とある場面で亡くなった母親を感じ取った事は何を暗示しているのでしょうか。
人種問題や宗教問題などに真正面から取り組みつつも、バイオレンスとアクション、そして謎を追うミステリーというエンタメとしても圧倒的な興奮、更に正義と罪と罰についても考えさせられるコスビーの新作。
読み逃すべからず、です。