『ロング・プレイス、ロング・タイム』 ジリアン・マカリスター | 固ゆで卵で行こう!

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ハードボイルド・冒険小説をメインにした読書の日々。


時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

 

 

 

離婚弁護士のジェンは目の前で息子のトッドが見知らぬ男を刺殺するのを目撃する。
いったいトッドは誰を、そして何故殺したのか。
哀しみと混乱の中で目覚めると、それは息子が事件を起こす一日前の朝だった。
そしてもう一晩が過ぎて目が覚めると、事件の起きた二日前の世界に。

それ以降、ジェンは眠る度に更なる過去へと戻っていく・・・。



「おぉ、なるほど~」と、納得し唸ってしまうようなラスト。

ジェンが戻る過去に散りばめられた伏線が回収される様に思わず嘆息すると共に、気付けそうで気付けなかった事がちょっと悔しくも(笑)。

きっと勘のいい人は途中で著者の仕掛けに気付くんじゃないかと思いますが、伏線回収された時の気持ち良さを堪能できたタイムリープ・ミステリーでした。

そして本書は知っているようで知らなかった家族の一面に気付いた時の困惑や悔恨、怒りや悲しみなど、そしてその関係の修復を描く家族小説としての側面も強かったです。

息子トッドが何故殺人を犯したのかという謎を突き止める事が、このタイムリープから抜け出し、息子の行為止める事になると信じるジェンなんですが、最初は1日ずつ戻っていたのが、徐々に数日前だったり何十日前だったりと、どうやら手掛かりとなるものがある日や、きっかけとなった出来事があった日に戻っているようで、その戻った時間軸で手掛かりを探します。

そこで、ジェンは息子の事をちゃんと見てこなかった、ちゃんとトッドが口にする言葉を聞いていなかった事に気付き、ちゃんと愛せていなかったと後悔し、また、それが原因で息子が人を殺すようになったのではと恐れ、戻った過去では接し方を見直し、息子と自身との間にある愛を確認できる場面が印象に残ります。

また、愛する夫ケリーについても、これまで気付いていなかった事を知り、その事に向き合う覚悟が必要になります。

こういった愛する家族との関係に悩む姿には、ジェンと同じ女性では無くとも読む者自身に置き換えて投影できそうで、自分も思いがけず自省する部分も(笑)。

SFとして読むと物足りないむきはあるかも知れませんが、タイムリープもの、タイムループもの伏線回収もののミステリーがお好きな人はきっと楽しめる作品です。

ラストの描き方もにくくて良かったですね~。
 

そうそう、個人的には過去に戻った自分の肌に若さを感じつつも、夫のケリーに対しては年を重ねた未来の方が好きだと実感する場面も印象に。

 

そういう風に思えながら年を重ねていきたいですね。