『早朝始発の殺風景』 青崎有吾 | 固ゆで卵で行こう!

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始発列車に乗り込むクラスメイトの男子生徒と女子生徒。
二人はそれぞれ始発列車に乗り込む理由があり、互いに探り合う様子が描かれる表題作をを始め、ある種「密室」な状態で描かれる日常の謎系の爽やかな青春ミステリー短編集。

それぞれ「お」と思える驚きや、目から鱗な考え方や表現があってハッとさせられます。

基本的に謎の裏、動機や結末の根底には優しさが溢れていて、じんわりと温かい気持ちにもなりましたし、読んでいて心地良かったですし、

特に卒業式を休んだクラスメイトに卒業証書などをもってきた学級委員長とそのクラスメイトのお話では、真相が明らかになった後の二人のやり取りには胸に溢れるものがありました。

また、クラスメイトが口にした「青春は密室でできている」なんて面白い考え方ですし、そう口にした登場人物の複雑な気持ちには感情移入してしまいました。


また、気付けばニマニマしてしまいそうなユーモアある会話の様子も楽しかったですね。

中でも表題作である1話目と主人公の男子と女子の様子なんかは樋口有介の描く少年少女を思い起こしたりもしました。

ちなみにこの第1話については他のお話とは少し雰囲気が違うのですが、それは最後に明らかになる、ちょっと背中がゾゾっとするような真の動機のせいで、その先がどうなるのか、どうなったのか気になるところでしたが、この顛末については最後に収められているエピローグで明らかになります。

なお、表題作にある「殺風景」が、実はこの第1話に登場する女生徒の名字だとは思いもしませんでした(笑)。


ところでそれぞれのお話については、ゆるーく繋がってはいますが、特に密接な関係性は無いので物足りないような気も。

この辺のあっさり加減というのも、本書の雰囲気をよく表しているのかも。


なにはともあれ、すごく「好き」な感じのミステリー短編集でしたし、著者の他の作品も是非とも読んでみたい気持ちになりました。

 

また、以前にドラマにもなっているんですね。

 

機会があれば見てみたいな。