ボストンマラソンの会場で、海外選手から古びた日記を新米駅伝監督・成竹は受け取る。
それは、戦時下に中止に追い込まれた箱根駅伝開催に奮闘した学生の日記だった。
成竹は駅伝には興味をもたない学生ナンバーワンランナーでパリオリンピックのマラソンを目指す神原にその日記を読んでもらう…。
胸に込み上げてくる‟何か”が感情を揺さぶり、何度も目頭も熱くなりました。
この込み上げてくる‟何か”って、いったい何なんでしょうか。
100回記念を迎えた今年の箱根駅伝。
しかし、過去に中止となり中断していた過去がありました。
現代パートで駅伝に興味のない学生No.1ランナー、そして戦中に想いを繋いで箱根を復活させた人々の姿を通して、戦争の虚しさや愚かさと平和な時代を積み重ねてきた事のありがたさや、箱根駅伝がこうして続いている意味の深さを知る事が描かれています。
それが決して説教臭くなく、自分の好きなもの、やりたいものができる意味とそれを繋げていく大切さを、自然に感じ取れるよう描かれていると思います。
正直、関東から離れた地方住人にとって、関東の大会でしかないはずの箱根ばかりが注目される事に、複雑な想いは多少なりともありました。
でも、なんだかんだ言っても毎年その中継を見るのが年々楽しみになっているのは、本書を読んでその未来へ繋ぐ熱い魂には素直に心震えましたし、紡がれてきたものを、タスキを運ぶ選手たちを通じて感じているからかも知れません。

