『ペンギン殺人事件』 青本雪平 | 固ゆで卵で行こう!

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目覚めると、祖父がペンギン(フンボルトペンギン)になっていた。

そんなシュールな場面から始まる…特殊設定ミステリ?

タイトルにもあるように、殺人事件もあるのはあるんですけど、描かれるのは殺人事件を解決するようなミステリでは無く、主人公の柊也の心の変化を追う物語なのかも。

突然ペンギンになった祖父。
日中預かる事になった不登校の小学生の女の子、晴。
祖父が経営する安アパートに住んで家賃を滞納している葉月。
それに何かと絡んでくる同級生の宗像。
 
ある事件をきっかけに高校を中退、家に引きこもり、祖父と二人で暮らしていた柊也がですが、祖父がペンギンになった事がきっかけに、自分が見たくないもの、知りたくないもの、現実に目を背けている事に気付き、向き合うようになっていきます。

しかしながら最後まで読むと、分かったような、やっぱり分からないような、読み手にその判断や想像を委ねられる結末が待っているんですよね。

「結局なんだっただよ?!」
「何を読まされたんだ?!」

なんて、読了後に本を投げ出したくなった人の気も分からないでないかも(笑)。

本当に祖父がペンギンになったのか。
そもそも本当にペンギンはいたのか。
ペンギンの正体ってもしかして?
同級生の宗像って一体?!
最後の卵はいったい何を表しているの?

途中、柊也と宗像が会話している場面での違和感とその正体についてなど、いろいろ考察できるような場面場面があって、その辺り、読んだ人同士で話すのも面白そうですね。

ちなみに単行本で刊行された際は『人鳥クインテット』というタイトルだったそうで、文庫化に伴いこの『ペンギン殺人事件』と改題されたとの事。

内容的には元のタイトルの方が合っているような気がしますが、自分のように今回の文庫化に伴う改題で興味をひかれたという読者も多そうなので、商業的にはいいのかなと思ったりもして。