『グレイラットの殺人』 M・W・クレイヴン | 固ゆで卵で行こう!

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首脳会議の開催が迫る中、要人を送迎するヘリコプター会社の経営者が殺される。
MI5の要請により、国家犯罪対策庁重大犯罪分析課のワシントン・ポーは相棒のティリーと共にその捜査を主導する事に。




〈ワシントン・ポー〉シリーズ4作目。

抜群のページタナーぶりはこれまで同様で、とにかく読ませる読ませる…!
 
短い章立てで、更にその最後に新たな謎を提示するなど、読者を引き付けて飽きさせない仕掛けが。

そして今回は天才分析官ではあるけど一般的な思考に欠けるティリーの成長ぶりや成長しようとする姿や、ポーと二人のどこかコメディのようなやり取りが沢山見れたのが嬉しくも楽しかったですね。

さて、事件は殺された人物が、迫る首脳会議において要人を運ぶヘリを運営する会社の共同経営者であった事から、果たして首脳会議に関して起きた事件なのか、それとも発見されたのが売春宿であった事から単に個人的な事に関してなのかが捜査のポイント。
 
ところが、殺害現場の状況から過去の銀行強盗事件との繋がりをポーたちは発見するものの、事件の繋がりは分かったところで今回の事件の謎は更に深まり、捜査協力を求めてきたMI5を信用できない事もあり、事態はより昏迷状態へと。


とはいえ、これまでのシリーズに比べると緊迫感に欠けるのは否めなかったですね。

これはポーたちが危機に陥いるような事件では無い事や、ポーやティリーの言動もそうですが、これまで以上にユーモアを感じさせるものが全体的に感じさせるものがあったからかも。

だいたい、序章でジェームズ・ボンドを演じてきた歴代の俳優のマスクを被った男たちによる強盗シーンから始まるってだけでも、掴みはOKって感じですよね(笑)。

ちなみに今回、ポーにとっての最大の危機は、ハードウィック・クロフトの我が家を失いそうになっている事だったかも(笑)。

その反面、スケールの大きさでいえばシリーズ随一であり、そういう意味で読み応えたっぷりな上、リーダビリティの高さでもって、700ページ以上を一気に読ませます。

シリーズに慣れてきたせいか、ある程度は先の展開が読めてしまったり、少々大味だなと感じる部分はありますが、何度も反転し、細かく伏線を回収し畳みかけるように展開、そしてポーのポーらしさが描かれる終盤の様子は、ドキドキしながら読み進めました。


さて、次回はポーがいよいよ自分自身について調べる事が描かれるのでしょうか。

前作で傷つき療養しているフリンも復帰していそうですし、今後もますます期待です。


あ、ところで誰もが知られたくない秘密を抱えているというところが今回のポイントの一つになっていましたが、ポーが自身のクローゼットの中に、見られたら刑務所送り間違いないものを隠し持っているとの独白が。
 
いやいやそれって不用心にもほどがあるんじゃないって、これまでのポーの危うい活躍を見てきた読者はみんな、きっとそう思ったんじゃないでしょうか(笑)。