『正義の弧』 マイクル・コナリー | 固ゆで卵で行こう!

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〈ハリー・ボッシュ&レネイ・バラード〉の最新作。

未解決事件を専門に扱う班が再設置され、その班長にレネイ・バラードが就任。
バラードは彼女にとってのメンターでもある引退した元刑事のハリー・ボッシュを班に迎える事に。

ボランティアとして未解決事件班に加わるボッシュは、刑事時代に手掛け未解決のままとなっている一家殺害事件を追います。

一方で、未解決事件班設立にあたって力添えした市議会議員の妹は殺害され未解決のままとなっており、政治的な理由からこちらの案件を優先的に捜査する必要が。

捜査はいつものように関係者の聞き取りや証拠の洗い出しなど、地道な調査の積み重ねから新たな手掛かりを発掘され、事件の再捜査にエンジンが掛かる様子には興奮させられますし、ページをめくる手も止まらなくなり、コナリーの巧さをまたも実感させられます。
特に後半に入ると読む方の熱量も上がって一気読みさせられるのがコナリー。

市議会議員の妹が殺害された過去の事件についてはある程度予想がつきましたが、そこからが真骨頂。
容疑者として浮かんだ人物が本当に犯人なのか。
この辺りは、コナリーを読み続けてきた読者は、どこまでコナリーの意図を読み解けるかも楽しみの一つかと(笑)。
 

さて、今回は特にボッシュとバラードの関係性の描かれ方が印象的でした。

バラードにとって警察官として指針となっているような存在であるボッシュですが、今回はあくまでもバラードが上司で、ボッシュはボランティアの捜査員でしかありません。

とはいえボッシュはかわらずボッシュな訳で、その手綱をどううまく捌くのか。

時に我慢ならない部分が見えて、もしかして決別するのではと思わそうなところもあるのですが、それでもやはり互いに信頼している様子がうかがえる場面が嬉しいというか安心しますね。


そして今回の最大の衝撃といえば、序盤で覚えた不安が的中…。
 
正義の在り方を、そして自身の生き方そのものを見せてくれてきたボッシュが、その自身の身の振り方をまざまざと見せつけてくれる様子に思わず震えるものが。

ボッシュも既に70代ですし、いよいよボッシュ・サーガの完結は近いのでしょうか。
 
ボッシュの決断とは。
そしてバラードは…?!


しかし、コナリーの作品、翻訳もとうとう本国に追いついてしまったんですね。
この先がどうなるのか期待と不安を抱きつつも新作を待ちたいと思います。