1930年、ロンドン。
三流新聞社の記者ジェイコブは、素人探偵レイチェル・サヴァナクを追っていた。
レイチェルは自分が突き止めた殺人者を死に追いやっている?!
レイチェルの秘密に迫るジェイクだが、次々と不可解な事件へと巻き込まれていく・・・。
レイチェル・サヴァナク、果たして彼女は名探偵か、それとも悪魔か。
名探偵にせよ、悪魔にせよ、レイチェルの魅力がやはりこの物語の原動力で、読めば彼女に心を奪われるのは間違いありません。
そもそも、冒頭から彼女がある人物の死に関わる場面が描かれており、更にはレイチェルについて語るある少女の日記からも、レイチェルが悪魔のような女性である事が示唆されています。
また、レイチェルの亡くなった父は、通称〈処刑台のサヴァナク〉と呼ばれるほど厳しい刑を処する判事として悪名高く、更に晩年は法廷で奇矯をとった事で知られる人物で、レイチェルもその狂気を受け継いでいるのかとの疑念も。
そんなレイチェルが有力者たちの死に関わっていく様子を、彼女を追う新聞記者ジェイコブを狂言回しのようにして描かれていくのですが、果たしてレイチェルの目的とは?!
レイチェルに、そして事件に関わった者たちは、次々と死を迎えるなど謎が深まる中で、意外な人物も犠牲に。
これには思わず声に出して驚きそうに。
さらに終盤、ある程度は予想がついたかなと思ったところで、もう一捻りあるのも心憎いですね。
ここまでは予想できなかったなぁ。
最後の活劇シーンも、こういう場面は用意されているとは思っていなかった事もあり、よけいに鮮やかで印象深いものが。
そう、この怪しさ満点の雰囲気もあって、本格ミステリーというよりは、どこか懐かしい怪奇冒険小説というかロマン小説のような味わいの方を強く感じました。
レイチェルの冷徹で計算高い豪胆さに比べて、新聞記者として成功する野心に燃えるも、まだどこか青臭く危なっかしいジェイコブ。
明らかにジェイコブはレイチェルの手のひらで踊らされている様子が見て取れるんですが、レイチェルとの関係性が微妙に変化していく様子もまた面白くも愉しいんですよね。
また、レイチェルが信頼し、レイチェルのために行動する使用人たちも、それほど出番が多くなくとも印象的で、彼らの物語、内面というのも知りたくなります。
その上で謎が多重構造のように連なり、それに翻弄されるように読み進めるのも心地よかったです。
この辺りが現代ミステリ的な楽しみが出来る要素なのかも。
さて、読み終えた時にあらためてレイチェルについてどう思うでしょうか。
新たな名探偵の誕生に喜ぶのか、悪魔めいた魅力にとりつかれるのか、それとも・・・。
