『孤島の十人』 グレッチェン・マクニール | 固ゆで卵で行こう!

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休暇を過ごすために孤島に集まった高校生の男女10人。

その中から一人、一人と殺されていく、本書はクリスティの『そして誰もいなくなった』の本歌取りともいえるクローズドサークルもの。

とはいえ、本格ものというよりはサスペンス色の方が強いです。

描かれるのは男女の色恋沙汰と友情のもつれがメインで、スラッシャー系スリラーが好きな方なら間違いなく楽しめる一作です。

実際、本格ミステリーを期待して読み始めましたが、そうではなさそうだと分かった時でも、なんだかんだでサスペンスフルに進むので、ぐいぐい読ませる力に引っ張られました。

謎のビデオを見た後に、一人ずつ殺されていく中、嵐により外部との連絡手段も無くなり、互いに疑心暗鬼に陥るという、王道的ではありますが、それだけにスリリングな展開。

少々強引かなと思う部分もありますし、本格ものを期待すると若干肩透かしをくらうかも知れませんが、YA向きのスリラーとして十分楽しめる作品でした。

これはやはり、孤島に集まった高校生たちの関係性、共依存に苛めに恋愛などなど、高校生らしいけれど普遍的な感情の揺らぎが描かれていたからかも。

主人公のメグも何やら秘密を抱えている様子で、メグにとって親友であり守るべき存在であるはずのミニーもまた、どうにも好きになれないキャラクターとして描かれています。

更にメグが想いを寄せていたけどその想いに蓋をしていた男の子との距離が近づいていく様子と、それを見守るミニーとの歪んだ友情関係は痛々しくも怖いものとして見えてきますし、その他の登場人物たちについても、それぞれが抱えてきた何かしらの歪みめいたものを感じさせます。

孤島に集まった10人の、そういった人間関係の愛憎のもつれと明らかになる真実、読みごたえありました。