版画家のヘンは夫のロイドと共に、引っ越し先の燐家のマシューとマイラ夫婦に招待されるが、ヘンはマシューの書斎にて、2年半前の殺人事件にて、犯人が被害者宅から持ち去ったとされる置き物を目にし、マシューは殺人犯だと確信し調べ始めるのだけれど…。
燐家の住人が殺人犯だったら?!
2年半前に起きたダスティン・ミラー殺人事件で、犯人が持ち去ったと思われる被害者の持ち物を目にしたヘンは、燐家のマシューの事を調べ始めます。
しかしながら、ヘン自身がもともと精神疾患を持っていた事もあり、夫のロイドはヘンの事を信じ切れない様子がもどかしいですし、読者もヘンの事を信じて読んでいいのか不信感を抱く事になると思います。
とはいえ、早い段階でマシューが殺人犯である事は、マシュー視点の語りパートの場面で明らかにされます。
ヘンのマシューへの疑いが確信に変わっていく中で、ヘンとマシュー以外の、新たな視点が加わってからの展開もスピーディで、意外性のある展開に思わず前のめりに。
そして、読みながら違和感を覚えた描写の正体が明らかになった時には、思わず「あ」と声をあげて驚いてしまいそうになりました。
「そうか、そうだよねぇ」
と納得しながら一気にラストまで。
精神疾患を持つも、強くあろうとするヘンが魅力的でしたが、そのヘンに対し共感めいたものを抱くマシューと共振したら、物語はもっと不穏なものになるのでは、との恐ろしさも。
そしてラストで明かされるある事実は、なんだかグシャっとした感情を抱かせる、最後の最後まで気が抜けないスワンソンらしいサスペンスでした。
