NATO(北大西洋条約機構)による大規模な軍事演習をロシアとノルウェーの国境近くで実施されるにあたり、ノルウェー空軍の女性パイロットのイルヴァは、アメリカ空軍の伝説的パイロットであるジョンと組み、民間ヘリの護衛のため国境近くをF-16戦闘機にて飛ぶ事に。
しかし、ロシア軍の戦闘機から威嚇を受けて機体が接触、ロシア領内に墜落してしまう…。墜落直前に脱出していたイルヴァとジョンは徒歩で国境を目指す……
なんといっても、いま現在のロシアのウクライナ侵攻とNATOとの対立にリンクするかのよう。
ロシアはNATOによる核基地への攻撃があったと主張、世界大戦へと繋がりかねない危機に、現実的な恐ろしさと不安に駆られます。
現在の戦争で重要なファクターでもる情報戦にも焦点を当て、ハイブリッド戦争の一端が垣間見れる様子に、陰謀に巻き込まれた女性パイロットのイルヴァが、極寒の地をロシアからノルウェーへと帰ろうとサバイバルする描写には彼女の強さと魅力がたっぷり。
一方で、イルヴァと共に国境を目指す、
極寒の地で追っ手だけでなく凍死する恐れもある中、イルヴァは自身が持つサバイバル知識とタフな精神力でもって、凍傷を負ったジョンを支え生き延びようとします。
しかし、ジョンはある秘密、重荷を抱えており、かつて捕虜となるも帰還する事ができ、英雄と呼ばれたジョンの哀しみが胸に迫ります。
また、ロシア側では、イルヴァの戦闘機に接触した戦闘機のパイロットであるイーゴリは、実際にあった事とロシア軍の上層部や世間にニュースとして流されたものとの違いに気付き、真実を抱え、果たして自分がどうすべきか思い悩みます。
それぞれ立場が違っても、戦争を避けたいと願う者たちがいる中で、自分たちの利権を追い求めたり、地位を守ろうとする者たち。
陰謀を仕掛けた側、そしてロシア側での動きなど、決してスッキリとはしない結末もまた現実世界を表しているようで、より恐ろしさを感じるものでした。
ところで、極寒の地のサバイバルという冒険小説的な側面に関しては物足りないところはありました。
この手のもので、かつての名作に並び超えるのはなかなかに難しいかと。
とはいえ本作は、主人公のイルヴァだけでなく、イルヴァを想いサポートするストーム(最初の印象より読み進めるといいやつでした(笑))や、伝説的パイロットのジョン、ロシア戦闘機のイーゴリなど、多数の登場人物の視点で描かれる群像劇でもあり、現在において決してフィクションとはいいきれないリアルな怖さを描いた作品だったかと思います。
