1819年のイギリス。
料理人ウェッジウッドは、長い赤髪の女船長マボット率いる悪名高い海賊団に雇い主を殺害され、海賊船に拉致されてしまう。
マボットから「命が惜しければ最高の料理を作れ!」と脅され、ウェッジウッドは毎週日曜、マボットだけに極上の料理を作ることになる。
19世紀初頭、海賊団に拉致された料理人のウェッジウッドは、悪名高い女船長マボットに週に一度最高の料理を作らなければならなくなります。
仕えていた主人を殺したマボットに対しての憎しみを募らせるウェッジウッドですが、生き残るために船上の限られた食材と調理器具で試行錯誤します。
そうして出来上がった料理はマボットの舌をうならせるだけでなく、船員の口も満足させる事で脱走を図るために武器となります。
そうして何度も機会をうかがい脱走を試みるウェッジウッドですが、マボットと一緒に週に一度食事をする中で彼女を憎む反面、惹かれていく自分に気付くだけでなく、マボットが海賊をしている理由を知ります。
あらすじだけを読んだ時はもうちょっとコミカルなものを予想していまいしたが、思っていた以上にシリアスで骨太な物語。
イギリスによる植民地支配、阿片や紅茶の貿易の真実が明らかになる事で、ウェッジウッドが信仰していた世界が崩れ、見えてくる新たな世界とウェッジウッド自身の内から湧き上がる感情が発露する様子がなんとも絶妙に描かれています。
ウェッジウッドが自身の世界を信じていたように、自分の見える範囲のものが真実であるとは限らないのは今も変わりませんね。
それにしても料理の場面が美味しそうですマボットとウェッジウッドと共にその料理を堪能したくなります。
また、マボットを始めとした海賊達も魅力的ですし、血肉弾ける戦闘場面も迫力あって読み応え満点!
切なくも温かいラストシーンもまた印象深いものでした。