〈グイン・サーガ〉148巻。
今回はイシュトヴァーンが躍動します。
とはいえ、パロを離れ、ドリアン王子を旗印に反乱を起こした旧モンゴールの貴族や騎士たちの鎮圧に向かうその姿はまさに流血王という事で、躍動というのは語弊があるかも知れません。
でも、イシュトが剣を振るい血を流す場面というのは、停滞している物語に大きなうねりをもたらすかのようにも。
そのイシュト、ヴァラキアの海賊として、そして王となる夢と野望に満ち輝いてた傭兵時代からはは思いもよらぬ、なんとも深いところに陥ってしまってしまいましたが、それでもイシュトの事を嫌いにはなれないですね。
自身の欲に渇望し、自身の都合の良いように信じ込んでしまうその姿は哀れでしか無く、同情したり共感したりる余地など本来なら無いのかも。
けれども振り上げた剣も下ろすある場面などには、誰もが魅了されたかつてのイシュトの姿が残っているようで、思わず希望を持ってしまったりも。
さて、イシュトがトーラスを炎で焼き尽くす以外にも、ヴァラキアでのスカールやブランにフロリーたち。
そしてケイロニアではグインやオクタヴィアやリギア、そしてマリウスについても描かれています。
その中でもマリウスはやはりマリウスであって、昔は好きでしたが、今はますます苛立たせる存在になっているような(笑)。
次回は「ドライドンの曙」という事で、ヴァラキアからパロへと向かう一団について描かれるのでしょうか。
ところで、前回の第147巻が出たのが2年前という事で、もしかして打ち切りになったのかと心配していました。
しかし著者のあとがきによると、産みの苦しみというか書けなかった模様です。
栗本薫さんが遺した長大な物語、その指針さえも分からぬまま書き続けるのはもの凄い重圧だと想像するしかないのですが、五代さんには健康で、そしてなんとか完結まで描いて欲しいものです。
