『ヨルガオ殺人事件』 アンソニー・ホロヴィッツ | 固ゆで卵で行こう!

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『カササギ殺人事件』から2年後、クレタ島でホテル経営を行っていた元編集者のスーザンの元に、8年前に殺人事件が起きた高級ホテルを営むトレハーン夫妻が訪れ、娘のセシリーが失踪した事件について調査して欲しいと頼まれる。

実はアラン・コンウェイが描いたミステリ『愚者の代行』は8何前の事件を下書きにされており、犯人は収監されているものの、作品を読んだ娘が何かに気付いた事を示唆した直後に失踪したという・・・。

 

 

 

 

あの『カササギ殺人事件』の、まさかの続編で期待値も大。

 

とはいえ序盤はなかなか乗り切れず。

探偵役のスーザンという人物に感情移入しにくかったのも、序盤がとっつきにくい原因だったかも(笑)。

 

探偵役となるスーザンが、クレタ島でパートナーのアンドレアスとホテル経営を楽しむ生活を送っているはずが、そのアンドレアスとの関係、ホテル経営の苦労、そして何より編集者としての自分に戻りたいと思う自分に気付くなど、自身の現在の境遇に悩みつつ調査する姿が描かれるのですが、かつてスーザンが担当していた作家アラン・コンウェイによる〈アティカス・ピント〉シリーズによる『愚者の代行』が作中作として描かれます。

 

この作中作である『愚者の代行』が始まった辺りからべらぼうに面白くなります。

もっとも、現実と作中作の中でリンクする登場人物達を把握するのに四苦八苦したんですけどね(笑)。

 

さて、本作も一粒で二度美味しいミステリとなる訳ですが、作中作の、そして現実世界の真犯人は果たして?! 

二つの物語の犯人について、著者の仕掛け、伏線がどこにあるのか探りながら読み進めた方も多いと思います。

 

で、作中作の『愚者の代行』の方は、真相についてある程度読めましたが、この作中作が本当に面白かったですね。

 

でも、現実の事件の方は読み切れませんでした。

著者があちこちに散りばめていた手掛かりは、終わってみれば明らかなのが悔しく感じるところかも(笑)。

 

それにしても、やはりアラン・コンウェイって本当に嫌なやつとして描かれていますね。

しかしながら、あんなに嫌悪していたアラン・コンウェイが描いた名探偵と同じように、関係者全員の前で真実を明らかにする事になるスーザンは、皮肉めいた現実でもやはり気持ちいい体験だったでしょうね。

 

 

さて、本シリーズは継続されるとの事で、残り7作の〈アティカス・ピュント〉シリーズがこれからも楽しめそう。

そして、ホロヴィッツの入れ子構造によるミステリの技巧と醍醐味を今後も楽しませてくれそうですね。