何度目かの再読となる〈ジョー・オローリン〉シリーズ1作目にして、著者のデビュー作です。
あらすじ及び初読時の感想は↓
冒頭で臨床心理士のジョーが、屋根から飛び降りようとする少年を説得する場面から一気に引き込まれます。
その後、惨殺された女性について、自身が診ているボビーという男の話す言葉に不穏なものを感じるようになる様子が、臨床心理士を主人公にしているだけあって、鮮やかにその心理描写が描かれています。
また、意外にもユーモアを感じられる描写が多く、また、ジョーが愛する妻と娘といった家族との関係なども丁寧に描かれており、そういった点でも楽しめます。
ただ、この辺については、物語を進める上で冗長かと思われる方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。
とはいえ、中盤、パーキンソン病を患い自身の未来に不安を抱えているジョーが、自身に殺人事件の嫌疑がかけらると知る辺りからグググッと面白くなってきます。
そして、後半に入ると、容疑者となったジョーが、自身の容疑を晴らすことは簡単だけれど、それをできないジレンマと焦りが加わり、警察に追われながらも、よりドツボにハマっていく展開が実に緊張感があってスリリングです。
最も疑わしき人物は果たして本当に真犯人なのか?!
終盤、二転三転して残りページが少なくなってきても、そこから更にもう一捻り。
主人公の苦悩や罪悪感、親子の確執など様々な感情の揺れを見せる心理描写を含めギュッと濃縮させたスリラーは、伏線の回収もまた見事です。
それにしてもジョーにとってはやむを得えずついた嘘が事態を混迷させたんですよね。
なので、
ジョーがついた嘘が自身に跳ね返るのは身から出た錆・・・。
確かにそれは間違いないかも知れませんが、そう言いきってしまうのは、パーキンソン病を患い将来を悲観したジョーに対して酷な話でしょうか。
ちなみに昔に読んだ際、ジョーの行動について共感する部分も多かったですが、今回の再読ではそうでも無かったのもまた再読の楽しみかも(笑)。
さて、最後は幸せだと語るジョーのその先の事もやはり知りたくなります。
続編、是非ぜひ読みたいっ!
今年は『天使と嘘』、それに『誠実な嘘』と、マイケル・ロボサムの話題作が2作品も翻訳されましたし、これをきっかけに本書の復刊とシリーズの翻訳を期待したいです。