自分向きの依頼では無いと思いつつも、脚本家を名乗る男から、自身が書いた脚本の原稿を持っているある男を脅かして欲しい依頼を受けるサムスン。
依頼内容について嘘である事を承知でサムスンは男が宿泊している部屋へ急襲をかけるが、脅しをかける相手から逆に依頼人の情報を得る事に。
私立探偵〈アルバート・サムスン〉シリーズ3作目。
夫の元を逃れ、昔の恋人マーチンと身を潜めるように生きている女性メラニー・ベアの手助けをする事になるサムスン。
しかしながら、そもそもの発端がメラニーの恋人マーチンからの嘘の依頼から始まったように、誰もかれもが真実を語らない為、読んでるこちらもストレスたまるというか、頭の中がこんがらがってきます。
そして、まるで迷路に迷い込んだような中で地道に調査する中で少しずつ真実の欠片を集めたサムスンが、最後は体を張った挙句に迎える結末は思いがけない形で現れます。
これにはサムスンでなくとも呆然としてしまうでしょう。
タイトルが示すのは、依頼人のために働くサムスン自身が依頼人にとって敵となるように思われる事なのか、それともサムスンにとって真実を語らない依頼人が内なる敵なのか、そもそも誰もが自身の中に敵を抱えているのでしょうか。
それにしても事件そのものは、もともとは様々な形での「愛」が原因だけに、ドロドロとした人間模様が現れ陰鬱な雰囲気になりそうですが、サムスンのどこかひねくれたユーモアが楽しく何度も笑ってしまい、本書がまるでコメディのようにも見えてききました(笑)。
また、サムスンの無茶な依頼にも何だかんだでサムスンを助け、またサムスンを助ける事で自身の手柄にもする親友ミラー警部補との電話でやり取りする場面は、まるで恋人同士がイチャイチャしているかのようで可笑しかったですね(笑)。
さて、シリーズ再読キャンペーンですが、まだまだ続きます!