酒に溺れ、事故で車椅子生活となったフィンが引っ越してきたニュージーランドの南の果ての町のコテージは、26年前に少女が失踪した事件が発生し、隣家のゾイル家の三兄弟が関わっているのではと疑われていた。
フィン自身も町での新たな生活を始めたところ、ゾイル家の不気味さもあり同じように疑いを持ち、過去の事件を調べ始めるのだが・・・。
主人公は人生に疑問を持ち、酒に溺れるて事故を起こして車椅子生活を余儀なくされたフィン・ベル。
妻と別れ、自身の会社も手放したフィンは、生きる意味を失った状態でニュージーランドの田舎町へと引っ越してきます。
そんなフィンですが、物語の冒頭でいきなり窮地に陥っていいます。
車椅子で思うように体を動かせないフィンは崖に宙吊りになっており、その絶体絶命の窮地をいかに脱するのか、そしてそのような状況に至るまでの過程が交互に語られていく様子が、26年前の少女失踪事件に関わるゾイル家の3人の不気味さ、フィンが受ける理不尽な仕打ちの数々への恐ろしさ、そしてフィンが感じる怒りが、サスペンス・スリラーとして徐々に緊張感を増幅させ、テンポの良さもあってまさに一気読み!
特に過去の少女の失踪事件の犯人だと間違いないと思われていながらも、証拠が無く現在も野放しで謎の生活を送るゾイル家の3兄弟の不気味さは際立っており、ゾイル家の面々から受けるおぞましい嫌がらせには、読者もフィンと同様に憤りを感じるはずです。
一方、事故で車椅子での生活を余儀なくされ、生きる意味を失い「人生の落伍者(デッド・レモンズ)」なのか問いかけられていたフィンが、どう人生に立ち向かっていくのか描かれる様子が、彼の人生を取り戻すための手助けとなる住人たちと共に活き活きと描かれており、舞台となるニュージーランドの様子や歴史も絡めて丁寧に描かれている点も読み応えがあります。
中でもマーダーボールと呼ばれる車椅子競技をフィンに教え、町での生活のみならず生きる事への助けとなるタイがなんともいい奴で、多少鬱陶しく感じるかも知れませんが、近くにタイのような存在がいてくれるだけで生きる事に光が差してきそうです。
また、真相が明かされる終盤の畳みかけるような描き方や、思いもよらぬ真実が見えてくる様子は本格ミステリとしても楽しめました。
関係者が集まる中で事件のあらましを語る場面など、主人公の名前が著者と同じという事で、この辺りはやはり本格ミステリを意識された構成となっているのではないかと思いながら、その上で更にもう一捻りもあって面白かったですし、本書がデビュー作という著者の今後にも期待されます。
ところで本書は東京創元社のゲラ先読みキャンペーンに当選し、発売前に読む事ができました。
東京創元社様、ありがとうございました。
これからも良質の海外ミステリの紹介、期待しています!
