1月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2549
ナイス数:349
夏の戻り船 くらまし屋稼業 (時代小説文庫)の感想
〈くらまし屋〉シリーズ3作目。かつて採薬使として幕府に仕えていた阿部将翁は余命少ない事を悟り、幕府の監視下からある約束を叶える為に晦まし屋に自身を晦ましてもらう事にするのですが、依頼を受けた平九朗たちは安倍将翁を監視する幕府側と、採薬使を狙う謎の集団〈虚〉との三つ巴の戦いに身を投じる事になります。その戦いの場面は緊迫感溢れ様子で描かれ、ようやく平九朗の過去の一旦も明かされてとシリーズはますます面白さを増してきました。前作からの登場の瀬兵衛が今後どのように関わってくるのか、そして序章の清五郎も気になります。
読了日:01月30日 著者:今村翔吾
インターンズ・ハンドブック (海外文庫)の感想
HR社に凄腕の暗殺者として育てられたジョン・ラーゴは25歳での定年退職を迎えるにあたって、後輩となる新人達のためにハンドブックとなる回顧録を語るといったスタイル。インターンという隠れ蓑をまとい標的の近くに潜り込んで仕事を行うために若くして引退を余儀なくされるという設定からして面白いんですが、映画愛に詰まったラーゴの語りが軽妙です。挿入されるFBIの監視記録は何だったのかなど色々突っ込みどころは満載ながら、感情を持たないラーゴが最後の仕事を通じて見付けるものの行方が気になります。続編も出たら読みたいですね。
読了日:01月23日 著者:シェイン・クーン
ブルーバード、ブルーバード (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)の感想
停職中の黒人テキサスレンジャーがテキサスの田舎町で発見された黒人と白人の死体について調べるという物語。ミステリとしての意外性は低いけれど主人公がなぜテキサスレンジャーとして故郷に立ち続けようとしているのかを、人種差別という癒される事のない病と共に描かれ、決して米国だけの問題ではないと改めて感じさせてくれます。その中で描かれたのは家族の物語であり愛の物語。だからこそやるせない想いを残しつつも主人公も最後は自分自身を取り戻せます。しかしそこから暗転するかのようなラストがより深くこの物語を印象付けるものでした。
読了日:01月16日 著者:アッティカ ロック,Attica Locke
魔界都市ブルース 幻視人(げんしびと) (ノン・ノベル)の感想
幻視したものが現実に。世界の破滅か〈新宿〉の破滅か。現実と幻の世界、途中でどちらがどうなのかとこんがらがります。途中で出てきた〝私”の意味がよく分からなかったけど、そもそもよく分からない事が多いシリーズだと納得させつつ読みました(笑)。とにもかくにも間ぼり幻視したものや敵の正体も分からず、なんだかよく分からないまま終わった印象です。という訳で感想もよく分からないものってことで(笑)。
読了日:01月12日 著者:菊地秀行
償いの雪が降る (創元推理文庫)の感想
大学の課題をこなす為に30数年前に少女をレイプし殺害した罪で投獄されるも癌によって死期が迫り釈放されている老人カールのインタビューを行う事になったジョー。その中でカールの無実を信じるようになり、カールの冤罪を晴らそうと行動をする姿は、ジョー自身の過去の罪と自閉症の弟の事など自身の抱える問題やカールのヴェトナム時代の罪の意識などを包括しつつ終盤は一気に事件の真相に迫ります。青臭く考えなしに見える未熟な主人公だからこそ応援したくなりながら、最後は目頭も熱くなりました。そう、「天国はこの世にも存在しうる」…。
読了日:01月10日 著者:アレン・エスケンス
去就: 隠蔽捜査6 (新潮文庫)の感想
〈隠蔽捜査〉シリーズ6作目(通算8作目)。今回はストーカー殺人事件を軸に、竜崎の原理原則主義のぶれない姿勢が描かれます。かつて竜崎の事を疎ましく思っていた部下や野間崎管理官までもが竜崎を信頼し頼っている様子が微笑ましくもある中で、自身の保身やプライドや野心に捉われる者がまるでピエロのようにも見えるかも。竜崎のようには決してなれないにしても、ほんの少しでも彼のように考えれるようになれればいいなと思いますね。それにしても「小物には腹も立たない」には笑えました(笑)。
読了日:01月06日 著者:今野 敏
贖罪の街(下) (講談社文庫)の感想
下巻に入るとボッシュの捜査もガソリンが燃えるように一気に進みます。かつての仲間達に裏切り者のそしりを受ける事は悲しく切ない現実。しかし真実を追い求めるボッシュの姿が変わらないからこそボッシュがボッシュたるゆえんでしょう。ハラーは危機感に欠けるような感じで描写されていましたが、最後は法廷で見せ場もちゃんと用意されているのがにくいですね(笑)。そしてその法廷でマディがボッシュに向ける信頼の笑みが何よりも嬉しかったです。
読了日:01月05日 著者:マイクル・コナリー
贖罪の街(上) (講談社文庫)の感想
リンカーン弁護士である異母兄弟のミッキー・ハラーから殺人事件で拘留されている容疑者の無実を晴らす意ために調査を依頼されるボッシュ。検察側で働いてきたボッシュにとって反対側の立場になる事は難しい選択。しかし無実の人間が拘留され真犯人は自由を謳歌している事をボッシュが簡単に許せるはずもなく、その使命感はやはり失われる事がない事が単純に胸が熱くなります。その中でソトがボッシュに協力する場面でボッシュの捜査方法を学ぼうとする姿が印象的でしたね。
読了日:01月05日 著者:マイクル・コナリー
読書メーター
2019年最初の月は8冊(7作品)読了です。
海外作品はどれも印象に残るものでした。
「インターンズ・ハンドブック」は昨年「このミス」でも上位にランクインしてましたが、その他に読んだ海外3作品も今年のランキングに入りそうなものですが、対象期間の最初の方に出版されたものは印象に残りにくくランキングから漏れる恐れがあるのが心配だったりして(笑)。
なにはともあれ年の初めからいい作品をいくつも読めて幸先いい感じです(笑)。