『傷だらけのカミーユ 』 ピエール・ルメートル | 固ゆで卵で行こう!

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傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4) 傷だらけのカミーユ (文春文庫) (文春文庫 ル 6-4)
ピエール・ルメートル 橘明美

文藝春秋 2016-10-07
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カミーユ警部の恋人アンヌは強盗事件に巻き込まれ瀕死の重傷を負ってしまう。

彼女を守るためカミーユ警部は独断で犯人を追おうとするが、独断で取った行動が自身の首を絞める結果になり・・・。




『悲しみのイレーヌ』、『その女アレックス』に続く、“カミーユ・ヴェルーヴェン警部”シリーズ、三部作完結編。


それは表題通り、まさに傷だらけとなるカミーユ・ヴェルーヴェン警部が描かれて行きます。


イレーヌを喪って痛みからようやく癒されるように、新たな恋人アンヌとの日々を愛おしく感じていたカミーユ。


しかし、またも愛する人が犯罪に巻き込まれます。


強盗に巻き込まれ重傷を負ったアンヌ。


目撃者でもあるアンヌを強盗犯は狙うであろうと、カミーユはアンヌを守ろうとするのですが・・・。


愛する人を犯罪によって喪った過去があるからこそ、その愛ゆえに聡明で優秀なカミーユの目は曇り、そして誤った行動に走らせた事は、自身を深みへと陥らせてしまいます。


そしてその結末は、なんともやるせないものでした。


前2作に比べると、ミステリとしての大きな仕掛けそのものはありませんが、カミーユ・ヴェルーヴェンという一人の男が、大きな喪失と再生を得て、本当の意味で自身を取り戻す物語だったのかも知れません。