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掠奪の群れ (文春文庫 (フ27-3))
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禁酒法時代が終わりに近づいたアメリカで実在したギャング、ハリー・ピアポイント(通称ハンサム・ハリー)の太く短い人生を描いた、事実に基づいたフィクション。
刑務所でジョン・ディりンジャーと知り合い兄弟と言い合うほどの仲になったハリーが、ジョンが出所後に脱獄の手引きをしてくれ、そして他に刑務所で知り合った仲間と共に銀行強盗を始め、そして警察に捕まるまで自由を謳歌した4ヶ月間と、最後電気椅子送りになるまで、ハリーの独白といったスタイルで描かれる。
ハリーの独白で語られるために、本来ならググッと盛り上がるような脱獄場面や強盗の場面も割合い淡々と描かれている。
そういった意味で退屈・・・とまではいかないまでも、グイグイと読ませるタイプの物語ではなかった。
けれでもハリーたちギャングが、友と呼べるほどの仲間に対する信頼、銃、金、そして女への愛はバカバカしいまでに純真に見え、強盗の場面では無関係の人間だって平気で人質に取るなど血も涙もない悪党であるのは分かっていても、その自分が自分である為に自由を謳歌し享楽に耽る様子は、なんとも愛すべき無法者に見えてくるから不思議だ。
これまで日本に紹介されてきた『無頼の掟』(過去の感想はこちら )や『荒ぶる血』(過去の感想はこちら )とは違ったアプローチではあるけれど、ある意味思い切りストレートなノワールとして楽しめた。
