『無頼の掟』 ジェイムズ・カルロス・ブレイク | 固ゆで卵で行こう!

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ジェイムズ・カルロス・ブレイク
『無頼の掟』 (文春文庫)

叔父たちと共に銀行を襲い、運転手として車で待機していたソニーは不慮の事態に陥り捕まり投獄される。

地獄のような囚人生活を耐え抜きついに脱獄したソニーは、再び叔父たちと共に無法者の世界へ入り込む。





舞台は1920年代、禁酒法時代のテキサス。

若き強盗、ソニーの一人称で語られる物語は、犯罪小説であり、青春小説でもあり、そしてロードノベルでもある。

強盗を繰り返し、血と銃弾が飛び交い、酒とセックスに明け暮れる無法者達の日々は、ほんとうなら殺伐とした描写になるところだろうが、主人公のソニーは強盗とは言っても好青年に見えるし、またソニーの叔父たちもユニークなキャラクターであるところから、重苦しい雰囲気は微塵も見せず、むしろ爽やかな風さえ感じ取れそうなぐらい軽妙な語り口だ。


強盗・脱獄・そしてまた強盗。

その間に語られる主人公達に関わる女性達との生活風景も生き生きと、そしてユーモラスに描かれている。


ひたすら強盗を繰り返す男達も、「無法者の世界だからってルールがないわけじゃない」というように、自分達の掟に従って犯罪を犯していく様は、いっそ清々しい。


そして・・・息子を殺された恨みからソニーに復讐を企てようと追ってきた保安官補の狂気が放たれるとき、最後の一行を読了後に残される余韻は切なくもあり、胸が熱くなるようなものに満たされるだろう。