『サウダージ』 垣根涼介 | 固ゆで卵で行こう!

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サウダージ (文春文庫 か 30-3) サウダージ (文春文庫 か 30-3)
垣根 涼介

文藝春秋 2007-08
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過去を捨て、悪事を重ねて独りで生きてきた日系ブラジル人の高木耕一は、コロンビア人の出稼ぎ売春婦DDと出会い、なぜかどうしようもなく惹かれるものを感じる。

DDの為に、そして自分自身の為に大金を手に入れようと、かつてプロのギャングとしてのレッスンを受けるも見捨てられた柿沢に連絡を取る。




『ヒートアイランド』『ギャングスター・レッスン』に続くシリーズ3作目。


今回の主人公はアキともう一人、日系ブラジル人の高木耕一。

その耕一、女からは色目を使われるいい男ながら、誰も信じず、自分自身さえ愛せない男。

そんな耕一もDDに出会った事で運命が大きく変わります。

ラテン気質で高木を振りまわすその様子はコミカルなんですが、そのDDにどうしようもなく惹かれてしまう耕一のその姿はどこか哀しげでもあります。


一方アキも初めて誰かを愛するという事を知ります。

その様子は『ヒートアイランド』で圧倒的な存在感を見せたアキと違って初々しく、とても人間的で魅力的です。

誰かを愛することによって、ただ世間から背を向けるのではなく向き合う事を知るアキの成長を伺え好印象。


そして自身のアイデンティティを持たない耕一が、自分の心に初めて正直になった時に起こす行動はやはり切ないものが。

しかし切ないながらも清々しいまでのラストは強く印象に残ります。


個人的にはシリーズの中で最も好きな作品ですね。