『スクレイリングの樹 (永遠の戦士エルリック6)』 マイクル・ムアコック | 固ゆで卵で行こう!

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スクレイリングの樹 (ハヤカワ文庫 SF ム 1-27 永遠の戦士エルリック 6) スクレイリングの樹 (ハヤカワ文庫 SF ム 1-27 永遠の戦士エルリック 6)
井辻 朱美

早川書房 2007-01
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新エルリック三部作の2作目である本作は北米と、意表をつくような場所が舞台。



突如何者かに攫われたウルリックを追って、ウルリックの妻で夢盗人の娘であり、そしてエルリックの娘であるウーナは夢の世界へと向かいます。

一方エルリックはジャグリーン・ラーンの凱旋旗艦の桁端に磔にされており、その状況から己とムーングラムを救う為、魔剣ストームブリンガーを取り戻さんと<千年の夢>へと入り込んでいます。


その中で描かれるのは<天秤>のバランスを保つために働いているものたちや、その天秤の秤を混沌と法のどちらかに傾けようとせんとするものたちの争いなのですが、それを象徴するというのか、天秤そのものを指すのか、無数の多元宇宙の枝をもつ樹を目指してウーナやエルリックたちは夢の世界を旅する事になります。


樹が持つ無数の多元宇宙の枝。

それは人の持つ想像力や妄想からいくつもの次元が生まれる事を指しているようなのですが、それぞれの次元でそれぞれの戦いが繰り広げられているかと思うと気が遠くなりますね。


そしてエルリックを始めとした永遠の戦士の化身たちは常にバランスの為に戦い、そして悲劇を繰り返す事が宿命とされている事が改めて語られると、彼らの運命に救いがあらんと願わずにいられません。


しかし、黒の剣に斬られて魂を吸われず生への帰還を果たした人物がいます。

これはある意味救いがある事を示唆しているのでしょうか。


新三部作の最後の物語にその答えはあるのか確かめてみたいですね。