『ヒートアイランド』 垣根涼介 | 固ゆで卵で行こう!

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ヒートアイランド (文春文庫) ヒートアイランド (文春文庫)
垣根 涼介

文藝春秋 2004-06
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渋谷でファイトパーティーを開くストリートギャング雅のヘッドのアキとカオルは、仲間がバーでアヤをつけて奪い持ち帰ってきてしまった大金に危機感を抱く。

果たしてそれはプロの強盗団がヤクザが経営する非合法カジノから奪った金の一部だった。





先日読んだ『ワイルド・ソウル』(過去記事はこちら )が予想以上に面白かったので、早速他の作品をと思いこの作品を手に取りました。


『ワイルド・ソウル』に通じる軽快なストーリー。

痛快でありながらも社会や将来に対する不信感と不安感、それに焦燥感を、主人公のアキとカオルを通じて描かれており、その辺をうまく読者の共感を得ながらもクライマックスへと流れ込んでいく様子はうまく、プロの強盗犯やヤクザたちを相手にアキとカオルは頭脳戦を繰り広げながら迎えるラストの乱戦も読みごたえありました。


ただ残念なのは、主人公であるアキという人物が最も描ききれてない。

社会への不満や不信を抱きながらも、将来への展望を描けない今時の若者。

しかし圧倒的強さとカリスマ性をもっているというところの説得性が感じられず、いまひとつ魅力を感じない。

相棒であるカオルや、プロの強盗犯たちやヤクザたちの方がよっぽど血肉のある人間的だった。


もっともアキの人生はまだまだ描かれるらしい。

続編でそういった点も描かれるのか興味と期待をもって読みたいと思います。