- 著者:米澤 穂信
- 『犬はどこだ』 (創元推理文庫)
健康上の理由で銀行を辞め田舎に帰ってきた紺屋が始めたのは犬探し専門の調査事務所。
しかし、その事務所を開業した途端に舞い込んできた依頼は犬探しではなく失踪人捜しと古文書の解読だった。
主人公の紺屋は健康を害したことで精神的にも厭世的になった25歳の男。
その紺屋が自立しようと始めたのが犬探し専門の調査事務所<紺屋S&R>。
しかし舞い込んできた依頼は失踪した孫娘の捜索依頼と、田舎に伝わる古文書の解読。
断りきれず引き受けた依頼を紺屋は失踪人捜しを。
そして調査員として雇って欲しいと押しかけてきた後輩である半田(通称ハンペー)は古文書の解読を始めます。
別々の調査だけれども、どちらも一つの事件に繋がるんだろうなというのは読み始めてすぐ思われますが、実際にその通りで、また早々に作中でもそれが明かされます。
探偵に憧れるハンペーがもう少し気が利いていれば、もっと早くに事件は解決していたかも。
しかし、ハードボイルド調な紺屋に対して、ハードボイルドに憧れるハンペーのその能天気そうな様子とは裏腹になかなか優秀な探偵ぶりを発揮してくれるところが面白く、また、クールな紺屋と明るいハンペーとの対比がうまく描けている事もあって、全体的にバランスよく且つ読みやすいミステリとなっております。
読み進むにつれてなんとなくそうなのかなぁ、そうなるのかなぁと思ったことがだいたい当たってしまったので、もう少し意外性があれば個人的にはより楽しめたのではと少々残念なところか。
けれどもその苦味のある結末は嫌いじゃないですね。
続編の構想もあるということなので期待して待ちたいと思います。