- 著者:マイクル・ムアコック 訳:佐伯経多&新間大悟, 小尾 芙佐
- 『軍犬と世界の痛み ( 永遠の戦士フォン・ベック 1)』 (ハヤカワ文庫)
1631年、戦乱のヨーロッパで<軍犬>の異名を持つ歩兵団長ウルリッヒ・フォン・ベック伯爵は部下を置き去りにして一人さまようと、不思議な城に迷い込んでしまう。
そこで謎の美女サブリナと出会い心惹かれるも、サブリナの主であるという堕ちた天使ルシファに出会い自身の信じられない境遇を知る事に。
フォン・ベックは自身とサブリナの魂の自由を得るために探索の旅に出る。
いやー、待ってました!
長らく読む事が叶わなかった、かつて集英社より刊行されていた『堕ちた天使』が改題されてハヤカワさんより復活!
ムアコックのファンとしては本当に長い間待ちわびていたんだよね~。
先日エルリックが新たに復活したが、その際にエルリックの新三部作も刊行。
だが、その新エルリックを読むうえで欠かせない、というか、ムアコックを語る上で欠かせないはずの『堕ちた天使』もきっとハヤカワで復活させると信じて待っていた甲斐があったというもの!
さて、本書だけれど正直言ってこれ単体としてみると読む人を選んでしまうかも知れない。
割合と平淡に語られる冒険行なので、ムアコックが描こうとするものが単につまらないものとして映るかも。
しかしエルリックやホークムーンやコルム、それにエレコーゼなど永遠の戦士のサイクルとして取り入れられている事もあって、それらに慣れ親しんできたものにとって、ある意味ムアコックが描こうとするものがストレートに映るんじゃないだろうか。
ダイナミックさには欠けるものの、永遠の戦士シリーズでお馴染の地獄の王(の影)も見えるし、やはりファンとしては読んでおくべき一冊ですね。