- 著者:ボブ・ラングレー 訳:海津 正彦
- 『北壁の死闘』 (創元推理文庫)
アイガー北壁で氷漬けになったナチ軍人の遺体が発見された。
BBC局員がその謎に興味を抱き調べると、そこには第二次大戦末期にナチ・ドイツによる原子爆弾の開発を巡った作戦が、魔の北壁で繰り広げられていた事が分かった・・・。
山岳冒険小説の傑作。
アイガー北壁を舞台に、歴史の裏に隠された作戦、初登攀への憧れや野心、魔の北壁で繰り広げられる死と隣合わせの登攀が、その緊張感や怖ろしさまでが伝わってくるかのように描かれている。
追い詰められつつあるナチ・ドイツが、戦争に勝つ為に原子爆弾の製造技術を得るためにクライマーとして優秀である者たちを集めて打たれた奇策。
そのクライマーの中の一人に選ばれたシュペングラーが、作戦の過程で出会うその他のクライマーたち。
はじめは敵対心を抱いていた者も、魔の北壁の前ではただのクライマーでしかなくなる。
圧倒的な自然の驚異を前にして、クライマーたちはひたす頂上を目指して、そして生きるためにいつしか全てを超えて結び合う。
そう、北壁で行われた死闘とは、単なる戦争ではなく、自分自身と自然とのまさに死闘。
大自然の前では人間なんてちっぽけな存在。
そこを生き延びた者たちが得るものは果たして・・・。
ラストはそうなるだろうと思っていた通りだったが、全てが語られず読者に想像を委ねる辺りが読後の余韻を長く浸らせてくれるあたりもにくいところです。