- 著者:マージョリー・クォートン 訳:務台 夏子
- 『牧羊犬シェップと困ったボス』 (創元推理文庫)
仕事熱心な牧羊犬シェップは、怒りっぽく時々分別の足りない行動を取るけど飼い主のボスの事が大好き。
そんなシェップの毎日は、牧羊犬競技会に出たり、美女(美犬)に誘惑されたり、他の犬と喧嘩したり、はたまた誘拐されたりと刺激的で忙しい。
その可愛さに殆ど表紙買い(笑)。
物語は牧羊犬のシェップの一人称で語られ、怒りっぽいけど大好きなボスがトライアル病を患った飼い主のボスの為にトライアル(牧羊犬競技会)に参加したり、他の犬との友情や、恋(?)、シェップよりも血統のいい犬との間に出来る子供、美犬の誘惑、誘拐、犯罪・・・など、色んなエピソードを犬の視点から描いており、アイルランドの田舎町を舞台にしたその様子は、忙しい毎日のはずなのに、妙にのんびりとしていて優しい雰囲気。
怒りっぽいボスやその奥さん、息子のマーティン、ボスの友達ジム、ボスの弟のヤンクなど、人間達のとる行動もシェップには奇妙に映る。
シェップにとって人生なんてシンプルなものなのかも。
割合淡々とした文章で、展開も盛り上がりに欠ける部分もあり物足りないと感じるむきも。
出来ればトライアルでの白熱した羊追いの場面などを散りばめて欲しかったかも。
「犬の扱い方さえ知ってれば、誰だってぼくを使えるのだ」という場面はちょっと切ないけれど、それでも犬の目から見た人間を皮肉ったような描写は笑えるし、そして分別が足りないなんて言いながらもボスの事が大好きなシェップはやはり可愛いのでした。