- 著者:荻原 浩
- 『メリーゴーランド』 (新潮文庫)
過労死する同僚まで出るような会社を辞めUターンし、田園都市の市役所勤務に就いたのが9年前。
啓一はすっかり田舎のお役所仕事に染まっていた。
そんな啓一が市が抱える超赤字テーマパークである「アテネ村」の再建会社への出向を命じられ、旧態然とした市の天下り先のような会社の役員達という壁にぶつかりながらも、かつての仕事の経験などを活かしてテーマパークをお客さんでいっぱいになるよう孤軍奮闘するのだが・・・。
荻原浩が描く、頑張るお父さんの物語。
それは読んでて主人公の啓一を応援し、熱くなり、そしてしんみり、それでいてハートウォーミングな物語。
お役所仕事というぬるま湯に浸かり、そこから抜け出せなくなりそうになるところ、啓一の背中を押すのはやはり愛する家族。
息子の宿題“お父さんの仕事”についての作文にどのように書かれるのか。
息子にとって誇れる父でありたいと思う気持ちが、超赤字のテーマパーク再生の為に、お役所仕事に勇気を持って立ち向かう。
長いものには巻かれるべきかも知れないけれど、それでも精一杯の事をする啓一。
ゴールデンウィークでのイベントに向け奮闘する啓一。
それは成功を納めたかに見えるけれど、個人の力でお役所や政治といった怪物に立ち向かうのはやはり厳しいものが。
啓一はお役所の中で政治の駆け引き、勢力争いの中、啓一が頑張った想いは・・・。
逆境の中を頑張る主人公を描き、痛快な気持ちにさせてくれるのは著者の『神様からひと言 』に通じるものが。
だけど、本作ではそれに加えて現実が抱える問題を皮肉り、そして現実に生きる人間の痛みもよく描かれており、そのぶんとても切なくほろ苦い。
けれど、その切なさとほろ苦さを和らげてくれるのがラストシーンだろう。
メリーゴーランドから眺める景色はとても美しく、主人公と同じような痛みを知る我々読者を優しく包んでくれるようで、自分も思わず目から熱いものが流れ出そうでした。。。