
- 著者:荻原 浩
- 『神様からひと言』
(光文社文庫)
佐倉涼平は大手広告代理店を、ある理由で辞めて「珠川食品」に再就職。
しかし入社早々に会議の場でトラブルを起こし「お客様相談室」へ左遷される。
また仕事を辞めようかとも思うがマンションの家賃やギターのローンの為に我慢。
慣れないクレーム処理に四苦八苦する毎日だが、そんな佐倉に汚名挽回のチャンスは訪れる。
なんといってもまずはクレームを言われる立場にある、そして会社に人質を取れている・・・そんな気持ちを抱いて働いているサラリーマンにとって共感を呼ぶ物語だ。
かくいう自分も、苦情の電話を受ける事もよくあり、また、生活の事とかなければ「こんな会社・・・!」なんて思う事がある(笑)。
家族のため、生活のため、理不尽と思われるような事でもこなさなければならない仕事。
だが会社自体が社員に対して不誠実な対応をしていると知った時、主人公のように“チキンハート”でない事を証明するのは難しい。
だからこそ自分達が出来ない事をやってのける主人公に喝采を送りたくなるのだ。
そしてそういった爽快感とは別に、著者らしいコミカルでハートウォーミングな展開も用意されている。
登場人物も個性的で、クレーム処理のプロともいうべき実力の持ち主ながら遅刻常習犯でギャンブルに目がない篠崎。
心因性のストレスから失語症になった神保。
現実の世界より空想の世界に生きている敬語も喋れない羽沢。
フェロモンむんむん、紅一点の宍戸。
室長の肩書きだけが頼りに威張る事だけしか能のない上司の本間など、お客様相談室の面々とのやりとりは読んでて思わずニヤニヤしてしまうかも。
そして忘れてはならないのが主人公の佐倉と同居していたけど、ある日突然部屋を出て行ってしまったシンガーのリンコの存在。
出番は殆どないものの、その存在があるからこそ佐倉がクレーム処理をする毎日の中で成長していけたんだろう。
そしてそして・・・主人公が公園で出会う“神様”の存在。
“神様”に出会えて希望と勇気を持つ事が出来た佐倉。
読者である自分達も、背中を押してくれるそんな存在と出会いたいもんである。


