『A型の女』 マイクル・Z・リューイン | 固ゆで卵で行こう!

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著者:マイクル・Z・リューイン 訳:石田 善彦
『A型の女』 (ハヤカワ文庫)

インディアナポリスの私立探偵アルバート・サムスンの閑散とするオフィスを訪れた依頼人である少女。

彼女は大富豪クリスタル家の一人娘であるエロイーズ・クリスタル。

エロイーズは血液型から自分が実の子供ではない事を知り、生物学上の父親を探して欲しいという。





“私立探偵アルバート・サムスン”シリーズの記念すべき第一作目。

先日13年ぶりにシリーズ最新作が刊行されたのをきっかけに久々に何度目かの再読。


シリーズ一作目という事もあり、全体のバランスは少々悪く感じる部分はある。

少々都合がよく感じる展開や、登場人物が雑多な感じで入り乱れたり、父親探しから発展する事件も焦点がブレてるような印象もあり、もう少しスマートに作り上げる事が出来たかも知れないと感じる。


けれど、なんていうのか作品全体に感じる雰囲気がいいのだ。


ハードボイルドとしては割合正統派。

レイモンド・チャンドラーの流れを汲んでるものだといえるだろう。

けれど、主人公アルバート・サムスンのその人柄が何よりも特徴となって、チャンドラーの流れを汲みながらもオリジナルな世界を作り上げていってるのが印象的。


銃を持つ事が嫌いで、争い事や面倒な事は避けたいけれど、自分の信ずる生き方に正直に向き合う。

軽く皮肉めいたユーモアな部分と自分に正直な部分、それらのバランスがアルバート・サムスンが持つやさしさを一層際立てている。


そう、本書が文庫化された際の帯には「はがねの優しさ。」と書かれており、自分もその一文に惹かれて読み始めた訳だけど、その通りアルバートが持つやさしさがシリーズ一作目からじゅうぶんに感じられる。

読了後、そのやさしい、しみじみとした余韻を感じる幸せが、本書をはじめこのシリーズを自分に何度も読み返させる一番の要因なんだろうと、こうして再読してみて改めて思った。



※注

ところで本書をこのブログの“しゃお的「読まずに死ねるか!(海外編)」のカテゴリに入れる事にしたが、シリーズの中で一番の作品という訳ではない。

けれど、やはりシリーズものとしては一作目が肝心でもあるし、またシリーズの中でも好きな作品なので入れる事にしました。