- 著者:ジェフリー・ディーヴァー 訳:池田 真紀子
- 『エンプティー・チェア〈上〉』 『エンプティー・チェア〈下〉』 (文春文庫)
ほんの少しの前進・・・それを望んでリンカーン・ライムは脊髄手術を受ける為にノースカロライナ州を訪れていたが、地元の警察から男を一人殺害し女性二人を誘拐した“昆虫少年”と呼ばれる少年を探す手伝いを要請される。
不慣れな土地、人材と分析機材の不足、そして何より乏しい証拠物件から少年の向かってる先を推測するのは困難するが、少しずつ少年の後を追う。
文庫落ちを待ってた“リンカーン・ライム”シリーズ三作目となる本作。
これはアメリアの物語なんだなって読了後は印象を受けた。
そして四肢を動かせず、ほんの僅か、一部分しか体を動かす事が出来ないリンカーンとの愛の物語だと。
“陸に上がった魚”のように、不慣れな土地・環境で、しかも乏しい証拠物件を元に少年の後を追いかけるリンカーンとアメリアが、徐々に少年との距離が近づいてく様は、後を追う者に仕掛けれた罠もあって、読者にも危機感を募らせる様子は読み応えあり。
そして、ついに少年を捕まえた時から、本当の物語が始まります。
そう、ここからがリンカーンとアメリアの互いの互いを想う気持ちが、追跡行やどんでん返しの連続の中で生かされるように描かれているのが秀逸。
実際、シリーズとしてミステリの面白さでいくと『ボーン・コレクター』や『コフィン・ダンサー』に比べると若干落ちる部分はあるかも知れない。
けれど、二人の相手を想う気持ち。未来への想いが切ないまでに伝わってくる良作だ。
ところで今年はシリーズ六作目となる『12番目のカード』が邦訳されたけど、早く四作目や五作目も文庫化して欲しいところです。