- 著者:ジェイムズ・エルロイ 訳:吉野 美恵子
- 『ブラック・ダリア』 (文春文庫)
1947年1月15日、ロサンゼルス市内の空き地に若い女性の惨殺死体が発見され、捜査員数百名を投入した大掛かりの捜査が始まる。
被害者はハリウッド・スターの座を夢見てロスに来たエリザベス・ショート。
映画関係者の目に留まるようにと、漆黒の髪にいつも黒のドレスを纏っていた事から、いつしか<ブラック・ダリア>と呼ばれるようになる。
実際にあった迷宮入り事件をジェイムズ・エルロイの手によって当時のロスの様子、その時代に生きる人々を深く描かれたノワール文学。
ミステリーとしても勿論じゅうぶんに楽しめる。
しかし、本書の最大の魅力は<ブラック・ダリア>に魅せられた二人の刑事、そしてその他の関係者のうちに潜む狂気が描かれているところにあるだろう。
スターを夢見るも娼婦まがいの事をして生活していたエリザベス・ショート。
その<ダリア>事件によって、うちなる暗黒・狂気・そして愛によってそれぞえの人生が狂い、また救われていく様は、当時のロサンゼルスの様子と共に読むものに哀切を伴って迫ってくるだろう。
一見複雑に見えるプロットと、多数の登場人物によって読むものの焦点を惑わすような部分もあるが、それが作品の魅力を殺ぐのではなく、逆にその猥雑ともいえる様子が魅力を高めている。
さて、現在ブライアン・デ・パルマ監督によって映像化されたものが公開中です。
映像化される事によって、その狂気や猥雑な魅力がどのように表現されいるのか確かめてみたいところです。