- 著者:サイモン・カーニック 訳:佐藤 耕士
- 『覗く銃口』 (新潮文庫)
元傭兵でボディーガードのマックス・アイバーソンは、簡単に思える護衛の仕事に仲間と共に赴くが、突如響き渡る銃声に驚く間もなく、仲間から銃口を向けられる。
かろうじて相手を返り討ちにするが、何故仲間に裏切られたのか、今回の依頼の裏にあるものは何だったのか分からないまま終われる身になる。
一方、不祥事を起こして降格となり移動させられたギャラン巡査部長は新米の刑事を連れて、ある殺人事件を追っていたが、事件を追う内に更なる事件が縺れ合って迷走する事に。
そしてアイバーソンとギャランの軌跡が交わった時・・・!
著者のデビュー作である『殺す警官』を読んだ時は、期待してたものと違ったせいもあってか、いまいち自分と合わないな・・・なんて印象を受けたが、今作はデビュー作から比べると著者の技量も大きく成長した様子も伺え、最初から最後まで楽しませてくれ、じゅうぶん満足感が得られた。
物語は、ボディーガードのアイバーソンと刑事のギャラン、二人の視点で描かれる。
どちらもじっくりと描写されているが、それなのにテンポも実にいい。
これは脇役たちもしっかりと個性を出しているせいだろうが、何より思わず二人とも応援したくなるような主人公二人の人物造形が魅力的だからだろう。
アイバーソンの方は自身に起った出来事に疑問を抱きながらも、一発逆転を狙って取る行動はシンプルに描かれる。
一方、ギャランの方は我が身に降りかかった災難の為に警部補から、しがない巡査部長に落ちた身を嘆きながらも、正義を求めて捜査を続ける内に次々と謎となるものが浮かび上がって事件が複雑になっていく様子が描かれている。
この対比が複雑なプロットで先が見えにくい展開の中でうまく効いている。
そして、読了後に「うまい」と唸らされたのは、冒頭に“現在”として配された章の存在。
ネタバレになるのでこれ以上は書けないが、この章の存在によって読者に最初に印象付ける著者の作戦に、自分はまんまとハマってしまった(笑)。
デビュー作の『殺す警官』を読了時には著者のサイモン・カーニックの今後にあまり期待は抱いてなかったが、今作を読んでそれはガラリと変り、逆に非常に期待を抱かせる作家と自分の中ではなった。
次作の邦訳が待ち遠しい。