- 著者:マイクル・コナリー 訳者:古沢 嘉通
- 『暗く聖なる夜〈上〉』 (講談社文庫)
- 著者:マイクル・コナリー 訳者:古沢 嘉通
- 『暗く聖なる夜〈下〉』 (講談社文庫)
4年前に自身が捜査を手掛けたものの、途中でロス市警に事件を取り上げられ、そのまま未解決となった殺人事件の調査をしだしたハリー・ボッシュ。
だが、調査に乗り出した途端にロス市警、果てはFBIからこの事件から手を引くようにと強力な圧力を受ける。
だが、被害者の最後の様子が脳裏に焼きついているボッシュは、大きな使命感に突き動かされるように調査を続け真相に迫る。
『シティ・オブ・ボーンズ』で受けた衝撃のラストを受けて、“新ハリー・ボッシュ”シリーズと銘うってもいいような“ハリー・ボッシュ”シリーズ9作目で、ますます磨きがかかったコナリーが堪能できる作品だ。
事件を調べ始めるボッシュの前に警告に現れる元の相棒がロス市警でどういった立場になっているのか。
4年前の事件でボッシュの後を引き継いで捜査をしていたロス市警の刑事が、強盗に襲われて半身不随の身になっている様子。
国家犯罪に絡んでボッシュに圧力をかけるFBI捜査官。
逆にボッシュに協力するFBIの捜査官や弁護士。
そして“一発の銃弾”である元・妻であるエレノアとの微妙な心理状態。
それらが見事にボッシュの孤独な捜査を色づけしてクライマックスへと畳み掛けます。
まず最初に驚かされるのが今まで三人称で描かれていたこのシリーズが、いきなりボッシュの視点で描かれる一人称に変っている事。
これは急展開を迎えて新たなスタートを切った“ボッシュ”シリーズとして効果的。
最初は戸惑い、そして不安を抱きつつ読み始めたが、ボッシュの内面を深く知る事によって、ボッシュが自身の使命として強く感じる“死者の代弁者”としての強い意志と使命感を強調させてくれる効果を得ている。
また、別れた妻であり元FBIの捜査官であるエレノアとの再会でも、ボッシュの心の強さや弱さといった機微がうまく描かれており、それによってラストがより感動を得られるという結果をもたらしたのではないだろうか。
ほんと、あのラストは卑怯だよコナリー。
思わず涙腺緩んじまうぜ。
だからこそこのシリーズは1作目からシリーズを通して読んで欲しい。
“ボッシュ・サーガ”の深い感動を必ず得られるはずだ。
ところでエレノアに関してボッシュが信じる“一発の銃弾”説。
これは・・・
「人は何度も恋に落ち、愛を交わすことができるが、側面に自分の名前が刻まれた銃弾一発しかない。もし、運良く、その銃弾に撃たれたら、その傷は決して癒される事はない」
・・・というもの。
この作品(シリーズ)は我々読者にとっても一発の銃弾になるかも知れないですね。
ところで今回、シリーズを先入観無しで読もうと何の予備知識も仕入れないようにして読んできた自分と同じように、出来るだけシリーズの醍醐味でなるである箇所については前作から引き続き、あえて触れずにあらすじや感想等を書いてみました。
これだけ情報が溢れ、いくらでも手に入れようと思えば出来る世の中ですから難しいかも知れないですが、このシリーズに関しては出来るだけ予備知識無しに読み進んで、驚愕そして感動を得て欲しいものです。